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陸自のAH-Xを分析する その1

Japan In-depth / 2018年11月30日 9時30分

 


またスバルには別なリスクもある。先述のようにUH-X開発に263億円の開発費が掛かっているが、この半分を防衛省が持ち、残りの半分をスバルが負担している。スバルは民間に約150機のUH-Xの民間型を売ると計画、これに開発費を按分する予定だ。


 


だがこの計画は「極めて楽天的過ぎる」というのが業界の見方だ。B412EPI自体があまり売れる機体ではなく、またベル社は現行のB412EPIの販売を止めるというコミットメントを行っていない。このため市場ではB412EPIとUH-Xが競合することになる。


 


しかもスバルにとって有望なUH-Xの潜在顧客だったフィリピン軍が既にB412EPIの調達を決定している。このためUH-X民間型の販売は極めて難しいだろう。もし殆ど売れなければスバルは開発費の回収ができなるし、UH-Xプロジェクト自体が赤字になるだろう。


もしUH-Xがキャンセルになれば同社のヘリ部門は、後は陸自が導入したオスプレイのメンテナンスぐらいなので、極めて難しい状況に追い込まれるだろう。


 


KHIのOH-1ベース案だがこれまた実現は難しい。OH-1は1997年から2010までに34機(+4機の試作機)が調達された。だが、本来の調達予定は約250機だった。これは調達予定単価が想定の7億円から24億円まで高騰、また年間の生産数が少ないため欧州のベンダーから撤退したからである。


 


そしてOH-1はエンジンの不具合で34機全機が2年以上も飛行停止状態である。現在2機に改修エンジンを搭載、試験中である。この改修ではエンジンを安定化させるために出力が落とされている。このため改修後は飛行性能の低下が予想される。また現在いつ試験が終わる見込みなのかの発表はない。しかも「改修が終わってもKHIとMHIのキャパシティでは全機の改修が終わるのは、9年は掛かる」(防衛装備庁幹部)、つまり既存のOH-1が完全に戦力化されるのは10年先である。


 


OH-1にはデータリンク能力が無いので、偵察した画像データなどを飛行後にVHSに引き出す要がある。このため東日本大震災など大規模災害でも殆ど偵察に使用されなかった。これの改修を行うのであれば更に戦力化は遅れるだろう。OH-1ベースの攻撃ヘリはコスト的にも技術的にも現実的ではないというのが業界の見方である。だが陸幕はOH-1 ベースの国産攻撃ヘリに強い執着を持っており、有望視する声が強いという。過去の教訓を全く無視しているとしか言いようがない。


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