バチカン、依存症問題解決に本腰
Japan In-depth / 2018年12月9日 12時27分
会議2日目は、各国から薬物問題の予防教育への取組み、メディアのあり方、治療や回復への方法が紹介された。発表者は、国もしくはそれに準じる薬物専門機関と民間団体に大別された。
国もしくはそれに準じる機関の取り組みは、日本でも国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部が行っているように、プログラムの開発や、介入から治療までの流れの紹介、さらには地域との連携や、就労支援などが紹介された。
しかしなんといっても驚いたのは、世界各国では教会関係者が回復支援を積極的に行っていたことである。もちろん日本でも、依存症支援団体に対し寄付金や会場提供などで協力をして頂いている教会もあるが、多くの教会関係者は依存症者との関わりを避けておられるのが現実ではないだろうか。私も自助グループの活動で、ミーティング会場をお借りしたく教会にお願いにまわったことがあるが、軒並み断られてしまった経験がある。
ところがバチカンの国際会議で発表されたアルゼンチンやフィリピン、ブラジルの教会では、回復支援に直接関わり、プログラムを実施し、さらには牧場などを経営しながらそこで就労支援までおこなっているというのである。また、ボストンのカトリック団体は、我々のような役割を担っており、24時間のヘルプラインを運営したり、予防教育や調査、啓発、家族支援などを行っていた。これだけ地域住民の尊敬を得、発信力のある教会関係者が、依存症に対しこんなにも理解があることには驚きとともに羨ましく感じた。
ではなぜ日本と諸外国で地域の理解にこのような差があるのか?それはひとえに依存症からの回復プログラム「12ステッププログラム」への理解の差だといえよう。ご存知の方もおられるかもしれないが、世界中で用いられ最も多くの回復者を輩出している回復プログラムといえば「12ステッププログラム」である。これはアルコール、薬物、ギャンブルなどの依存症者及びその家族の回復にも効果があり、現在140カ国以上の国で使われ、200種類以上の依存症やそれに伴う諸問題のグループで取り入れられている。
私もこの12ステッププログラムで回復した一人であるが、このプログラムはただ単に「依存行為が止まる」ということを目標にするのではなく、「依存症の背景にある生き方や考え方を変える」というところに主眼がおかれているため、依存行為が止まった後の抜け殻感や、やめるための必死の我慢といったものがなく、結果として非常に楽になれる。
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