女性アスリートの貧血問題
Japan In-depth / 2018年12月31日 18時2分
上昌広(医療ガバナンス研究所 理事長)
【まとめ】
・全国高校駅伝で鉄剤注射の是非議論に。陸連は原則禁止を決定。
・安易な禁止は問題。医学界の趨勢は「鉄補充は重要」個別対応を。
・日本は貧血大国。陸連や政府は統制でなく選手やコーチ支援を。
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この稿で何度か誠励会の活動を紹介した。福島県石川郡、阿武隈高地の南部を中心に医療、介護、放射線対策などを実践している組織だ。
東日本大震災以降、私も何度も誠励会の施設にお邪魔した。その際、移動中にランニングをしている高校生を見かけた。案内してくれる誠励会のスタッフは「学法石川(高校)の生徒さんたちです。陸上部が強いですよ」と教えてくれた。
学法石川は明治25年に石川義塾として創立した福島県内最古の私立学校だ。同じ石川町内にある福島県立石川高校と区別するため「学法石川」と呼ばれる。陸上競技以外にも、自転車や野球も強い。元横浜大洋ホエールズのエースだった遠藤一彦投手はOBだ。
最近、学法石川の明るいニュースが福島県民を喜ばせた。12月24日、地元紙「福島民友」は一面トップで「学法石川3位 全国高校駅伝 県高校記録塗り替え」という記事を掲載した。
これは前日、京都市の西京極陸上競技場を発着点にして行われた第69回(男子)、第30回(女子)全国高校駅伝競技大会の男子の部で、学法石川が入賞したことを報じたものだ。同校には外国人留学生はおらず、日本人だけのチームに限定すればトップだった。
同校は8年連続の出場で、この数年は優勝候補に挙げられることもあった。ところが、本番で力を出し切れなかった。今回、殻を破った。来年以降の益々の活躍を期待したい。
ところで、この大会は別の意味でも話題となった。それはアスリートに対する鉄剤注射の是非を巡っての議論が盛り上がったからだ。
仕掛けたのは読売新聞だ。12月9日から大会当日までの間に、読者の寄稿なども含めると鉄剤注射に関する記事を42報も掲載した。同期間に朝日新聞は8報、高校駅伝を主催する毎日新聞は10報だった。読売新聞の力の入れようが分かる。
彼らが問題視したのは、女性選手を中心に、高校駅伝の一部の強豪校で成績を向上させるため、不要な鉄剤の点滴が行われていたことだ。点滴によって過剰に投与すると、肝臓や膵臓などに沈着し、肝障害や糖尿病を引き起こすことが知られている。
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