「変わるアジアのパワーバランス」 Japan In-depth創刊5周年シンポ その3
Japan In-depth / 2019年1月12日 18時0分
中谷: 日中の対話が行われたのは5年ぶりくらいで、首脳同士の話し合いができるということは中国に何らかの変化があったということ。特に米中関係は経済面で非常に混乱しているし、習近平体制もやはり日本と対話をすることにメリットがあるという認識で進んできている。日中中間線でのガス田開発テストのほか、尖閣列島では月3回領海侵犯が行われ、非常に緊張した状態が続いているのは事実だが、わが国の国益をしっかり考えつつ話し合いを継続している状況だ。
安倍: 古森さんに聞く。安倍首相の中国への対応をみて、米中関係の観点から日本は正しい方向に進んでいると思うか?
古森: 正しい方向に進んでいるという、スパッとした答えは私自身出せない。まず懸念材料がある。それは安倍さんが習近平と会って、3つの原則で「競争から協調へ」と言っているが、トランプ大統領が中国に対して言っている言葉とはまさに逆だ。トランプ大統領は「協調から競合へ」行くのだと、あるいは、今までの協調は間違っていたと言っている。敵対的な、という言葉までは使わないが、ライバルとか価値観がぶつかり合うということを言っている。
▲写真 習近平中国国家主席夫妻を歓迎するトランプ夫妻 2017年4月17日 出典:Twitter : President Trump
つまり、表面で見る限り、日米の動きは正反対だ。レトリックで見る限り、大統領の近くにいる外交専門家も1人、このような安倍政権の対中政策は失敗であると言っている。アメリカと全く正反対のことをやってしまうのだからうまくいかないよという論文を書いている。だが、同時に、トランプ政権内外のもっと大勢の人たちは、いやいやそんなことないと。安倍・トランプ間では事前の話し合いがあり、役割分担があり、実はきちんとやっているのだという声の方が実は多い。
日本に対しても、アメリカに対しても問題を起こす中国にどう対応していったらいいか。アメリカの映画などでもしばしば出てくる「グッド・コップ、バッド・コップ(良い警官・悪い警官)」という言葉がある。中国を被疑者に例えてしまうと申し訳ないが、被疑者を落とすときに優しいお巡りさんが出てきて「いや、わかる。そうか、そうか」と言えば、それがグッド・コップで、もう1人、「お前なんだ、これは!」とテーブルを叩いて責める方がバッド・コップ。実はこの2人は裏で協調して手を結んでいて、いろいろなやり方で被疑者を思う方向にもっていく、喋らせると。
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