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「変わるアジアのパワーバランス」 Japan In-depth創刊5周年シンポ その3

Japan In-depth / 2019年1月12日 18時0分

日米の中国に対する対応もそれぞれの役割、区分があって協調してやっているのだという意見のほうが強い。ただ、それを裏付けるはっきりとした証拠はない。安倍政権の中でいま中国と仲良くしようと言っている人たちははっきり言えば、経済産業省系の人たちだ。彼らにとって伝統的に中国との関係で一番大事なのは経済、貿易関係であって、安全保障、軍事、政治的な価値観という根本的な部分はあまり重視しないことが多かった。もしかすると安倍総理がそういう人たちに引っ張られているのではないかと、私は懸念している。


もし、日米間にベースの違い、考え方の違いがあり、日米が違う態度で中国に対応した場合、問題は2つある。一つはトランプ政権が「今こそ日米がピタッと連携してやるべき時に、何かおかしいではないか」と言い出すこと。もう一つは、日中関係に実際には大して大きな変化が起きず、中国だけを利してしまうこと。この二つである。


実際には日中関係に大きな変化が起きていないのに、中国がほぼ突然微笑外交に転じてきた。突然ニコニコ笑って日本は大切だから仲良くしましょうというような言動を取り始めた。中国首脳が今まで日本に対して述べてきた言葉を覚えている人間にとっては気持ちが悪いほどの急変だ。中国の日本に対する政策が本当に変わったのかどうか、悪い方向から友好的な方向に本当に変わったのかきちんと確認することが大事だ。


変わった上での微笑外交であれば大いに歓迎して良いし、こちらが対応してもいいわけだが、変わった兆しはない。例えば、尖閣諸島を究極的には奪取するぞとの姿勢を変えていない。公船、実際には武装艦船が日本の領海に侵入し、数も増えている。島から島へ移動するコルベットというタイプの小型艦艇をものすごい勢いで建造している。尖閣諸島を中心とする対小島作戦や南シナ海での軍事攻勢を高める目的だ。


そしてもう一つは抗日教育・反日教育は全然変わっていない。例えば、中高校生に憲法9条や、日本がODAで友好を進めてきたことなど、戦後の日本の平和主義的な諸点は何も教えていない。南京虐殺や盧溝橋事件で日本が一方的に中国に対して実行したという残虐行為や侵略行為だけをずっと教えている。しかも、習近平政権は抗日の記念日を国家行事のレベルに引き上げた。


中国の日本に対する政策が全然変わっていないのは経済面でも言える。外国企業が中国に進出し、生産活動、営業活動を始めるには、中国側との合弁会社にしなければならないと義務づけ、高度技術を奪取する。また、中国政府は中国企業に対し、不当な補助金を出し続けている。このため、外国企業は中国国内でも外国市場でもなかなか公正な競争ができない。とくに中国内部では、中国企業並みの自由な活動も、競争のチャンスも与えられない。トランプ政権は中国のWTO違反を指摘し、アメリカの企業もどんどん問題提起して叫ぶ。だが、日本の企業は非常におとなしい。何も言わず、じっと我慢していればやがて良くなっていくのだという態度を貫いている。


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