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岩手に出でよ!21世紀の原敬

Japan In-depth / 2019年3月30日 18時51分

このあたり長州とは全く違う。尊皇攘夷を唱えた彼らは、事態が変わったとみるや、開国路線に踏み切り、天皇まで担ぎ出した。第二次世界大戦で敗戦後は、岸信介は米国と連む。岸がCIAから資金援助をうけていたことは周知の事実だ。彼が巣鴨プリズンを出所したのは、東條英機が処刑された翌日だ。安倍総理は、このような人物たちを成功例として育っている。安倍総理は保守の象徴のような存在だが、憲法改正、外国人受け入れ、労働者の賃金引き上げなど、掲げる政策は海外では左派が主張するものばかりだ。私は、彼が長期政権を維持できているのは、その融通無碍にあると考えている。


盛岡と長州、どうしてこんなに違うのだろう。なぜ、明治維新以来、一貫して長州関係者は日本を仕切るのに、岩手県は衰退を続けるのだろう。


私は情報量の差だと考えている。両者は置かれている地政学的な状況が違う。長州は大陸と近く、下関という貿易港を中心に発展したのに対し、盛岡は北前船や東海道のような大動脈と縁がなく、江戸や東京を経由した二次的情報に依存してきた。高度成長期、東京は世界を代表する大都市で、アジアの中心だった。岩手も、その恩恵を享受することができた。


ところが、状況は変わった。我が国の人口は減少し、東アジアの中心は中国となった。中国が、このまま経済成長すれば、2040年代には国民一人あたりのGDPが日本と同レベルになる。経済規模が10倍以上の豊かな大国が西隣に誕生することになる。


明治時代、日本海側から太平洋側に日本のウェイトが変わったように、これから数十年で日本の重心は変わるだろう。東京一極集中が続くのは東日本だけだ。この地域では、父親が前沢出身の元岩手県知事の増田寛也氏が主張したように消滅都市も出てくるが、東アジアは中国を中心に再編される。東アジアの歴史を振り返れば、これは自然なことで、日本もその影響から逃れられない。すでにその徴候はある。


3月19日、国交省が発表した公示地価で、住宅地、商業地とももっとも上昇していたのは沖縄だ。それぞれ8.5%、10.3%である。東京の2.9%、6.8%を大きく上回る。


中国人観光客の影響を受けやすい商業地に関しては、この傾向はさらに顕著だ。上昇率は高い順に沖縄10.3%、京都9.7%、東京6.8%、大阪6.5%、宮城5.9%、福岡4.9%となる。東京以外の首都圏は千葉2.9%、神奈川2.4%、埼玉1.6%だ。熊本の3.4%にも及ばない。在京メディアは「首都圏と地方」という二項対立で報じがちだが、その視点は正しくない。


SNSが発展した昨今、情報は格段に入手しやすくなった。その気になれば、どこからでも誰とでも交流できる。岩手が生き残るには、東京との関係だけでなく、東アジアの中での立ち位置を考えねばならない。岩手に求められるのは、「二一世紀の原敬」だ。自分の力を頼りに、アジアと岩手を股にかけて活躍する人材を育てなければならない。


*本稿は時事通信社の『厚生福祉』3月19日号に掲載された拙文「地域の人材育成力 幕末、明治維新の歴史から」に加筆・修正したものです。


トップ写真:盛岡城跡(岩手県)出典:663highland (ウィキメディア・コモンズ)


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