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新防衛大綱・中期防を読む(上)

Japan In-depth / 2019年4月3日 23時0分

新防衛大綱・中期防を読む(上)


清谷信一(軍事ジャーナリスト)


【まとめ】


・多目的空母の必要性主張を。駆逐艦との強弁は国際的信用失う。


・艦艇や戦闘機の調達数減らし、整備・人員の確保やクルー制を。


・隠蔽体質は隊員募集に困難きたす。納税者への稼働率公表を。


 


【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=45030でお読みください。】


 


昨年12月17日、本年4月からの新たな防衛計画に大綱(防衛大綱)と中期防衛力整備計画(中期防)が閣議決定された。


新防衛大綱と中期防は現在のそれとは大きく異なっている点が少なくない。今回メディアで注目されたのはいずも級DDH(ヘリコプター護衛艦)の空母化だ。政府や防衛省は「空母」という言葉を忌避して「多用途運用護衛艦」と呼称している。また常にF-35Bを搭載、運用するのではないから「空母」ではない、というのが政府の見解だ。防衛省は英語でも未だにDestroyer=駆逐艦と称している。明らかな多目的空母を駆逐艦と強弁するのは国際社会の信用を失う。



▲写真 垂直着陸するF-35B 出典:Airwolfhound from Hertfordshire, UK(Wikimedia Commons)


これは他国を攻撃できる「攻撃型空母」を保有しないというこれまでの政府答弁を忖度したものだが、「攻撃型空母」の正確な国際的な定義も、国内的な定義も存在しない。他国を攻撃するのは通常の護衛艦でも可能だ。例えば釜山や上海に対して護衛艦で艦砲射撃をすれば「攻撃的兵器」となる。別に空母だけが他国を攻撃できるわけでない。つまり言葉遊びに過ぎない。


また70年代ぐらい前と現在では兵器の「常識」も大きく変わっている。半世紀前の答弁を金科玉条として奉る必要はない。むしろ「空母」を駆逐艦と強弁して現実を見ないことが、他国から疑いの目で見られ、また国内の議論を混乱させることになる。


政府は搭載機によって「攻撃型空母ではなくなるなどの説明をしているが、これはナンセンスで米海軍の原子力空母は任務によっては攻撃機や戦闘機、早期警戒機を下ろすこともある。そうなれば「攻撃型空母」ではなくなるのか、という話にもなる。高々2隻40機に満たない攻撃機で航空優勢を確保して敵国を制圧するのは現実的ではないと素直に説明するほうが誤解もない。


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