ディオバン事件から学ぶもの
Japan In-depth / 2019年5月26日 11時0分
上昌広(医療ガバナンス研究所 理事長)
【まとめ】
・ディオバン事件を機に臨床研究法が成立、医療界・製薬業界に変化。
・薬品会社から50人の医師に多額の金が流れていた。
・今、製薬会社と医師に求められているのは「透明なプロセス」。
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「この研究をするのは、当初、気が進みませんでした。無用な敵を作るからです。ただ、研究不正は患者さんの健康に直接関わります。また、ディオバン事件は母校の千葉大学が関与していました。事件の後、どうなったのか、はっきりさせたいと考え、決心しました」
こう語るのは澤野豊明医師である。南相馬市立総合病院に勤務する外科医だ。5月17日、アメリカ医師会が発行する“JAMA Network Open”誌に製薬マネー研究の論文を発表した。
この研究は、2012年に発覚した降圧剤の臨床研究不正であるディオバン事件に関わった医師が、その後、製薬企業とどのように付き合っているかを調べたものだ。
▲写真 澤野豊明医師 出典:Twitter @Toyoakisawano
ディオバン事件の舞台は、京都府立医大、慈恵医科大、滋賀医科大、千葉大、名古屋大だ。ノバルティスファーマ社(ノ社)が販売する降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床研究で、その効果を高めるようにデータが改竄され、その結果が英文医学誌や学術集会で発表されていた。一連の臨床研究ではノ社の社員が統計解析を担当し、論文ではそのことを隠していた。
ノ社は研究成果を販促に使い、最盛期には国内で年間に1400億円超を売り上げた。ノ社からは臨床研究を遂行した教授や彼らが主宰する講座に巨額の資金が渡っていたことが分かっている。
2014年6月、元社員は薬事法の誇大広告違反容疑で逮捕され、7月にはノ社とともに起訴された。現在、係争中である。
5つの大学が発表した一連の論文は撤回され、慈恵医科大、滋賀医科大、京都府立医大の関係者は引責辞任した。
さらに、2017年4月には臨床研究法が成立し、翌年4月から施行された。この結果、製薬企業の資金提供を受けて実施する医薬品の臨床研究は「特定臨床研究」と位置付けられ、モニタリング・監査などが義務付けられた。
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