医療の可能性と若手医師育成
Japan In-depth / 2019年6月28日 23時0分
ポイントだけを紹介すると、エムネスの売りは画像データをクラウドに集約していることだ。彼らが利用するのがグーグルクラウドプラットフォームで、グーグルはエムネスを「テクノロジーパートナー」に認定している。
エムネスのシステムを導入した医療機関では、撮影されたCTなどの画像はクラウドにアップされ、エムネスと契約する放射線診断専門医が読影する。結果は、画像に読影レポートをつけて、クラウドを介して、医療機関に戻される。
エムネスの売りは料金が安いことだ。それは画像の保管にはグーグルクラウド、やりとりにはインターネット回線を使うため、経費を圧縮できる。医療機関は専用回線や専用サーバなどの初期費用を負担する必要がない。負担する費用はMRIやCT 1台あたり月額3万円で、読影は一件で3,000円だ。
エムネスは急速に顧客を増やしている。楽天OBたちが銀座に立ち上げた「メディカルチェックスタジオ」という脳ドック専門のクリニックに導入されている。脳ドックの値段は1万8900円だ。通常の値段は4〜8万円程度であり、破格の安さだ。開業後1年半で2万人が受診したという。エムネスのシステムが脳ドック業界に革命を起こしていると言っていい。彼らの活躍は国内だけに留まらない。モンゴルなど海外からの画像も受け付けている。
▲写真 メディカルチェックスタジオ-スマート脳ドック 出典:Flickr; TAKA@P.P.R.S
こうなると大量の画像データがエムネスに蓄積される。これは研究者にとって宝の山だ。特に人工知能関係者からは注目されている。エムネスは、東京大学発のベンチャーであるエルピクセル社と共同で、人工知能診断を臨床現場に導入している。嶋田医師は、大学院のテーマとして、エムネスと協力して、この領域を専攻したいと希望している。
現在、嶋田医師は岐路に立たされている。彼は南相馬市立総合病院で脳外科の診療を続けながら、新しい可能性にもチャレンジしたい。彼が希望する研究は、専門医不足に悩む浜通りの脳外科診療の改善に直結する。
ところが、彼が南相馬市立総合病院で働きながら、エムネスで診断業務に携わると「兼業規制」に抵触する。どうしてもやりたければ、南相馬市立総合病院を辞めるしかない。
従来、他施設が有する先進的な技術を学ぶなら、研修目的で出張するのが通常だった。嶋田医師も、南相馬市立総合病院からエムネスに研修にでかければいいとお考えの読者が多いだろう。なぜ坪倉医師は南相馬市立総合病院とエムネスの二ケ所勤務にこだわるのだろうか。
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