「国際薬物乱用・不正取引防止デー」厚労省への要望書
Japan In-depth / 2019年7月26日 18時4分
予防医学では、もちろん一次予防の病気にならないような対策は大切ではあるが、どんなに気をつけていても病気に罹患する人はいる。そのために早期発見・早期介入を実現し、治療法を確立したり、人材を育成していく、そして再発防止の措置を講じ、社会復帰をしていく、という考えがとられている。
例えばこれが糖尿病だったら、「カロリーコントロールと適度な運動」という誰でも知っていることが一次予防。けれども必ず罹患する人はいるわけで、健康診断などが二次予防そして、早期介入、早期治療を実現し、その後、カロリー指導や場合によってはリハビリなどを受けながら社会復帰をしていくことが三次予防である。
いくら違法薬物が日本では犯罪扱いだからといって、監麻課のように一次予防だけを強調し、あとは「破滅」などとスティグマを強化していくやり方は、予防医学の点からも、健康障害を抱えた若者を救う観点からも考えられないし、管轄官庁としてあまりに無責任である。
こちら側としては、一次予防を強調し過ぎず、二次予防、三次予防と同時並行させていくことが大切であって、一次予防だけを強烈に言っていくと他でハレーションが起きてしまうことと、実際に薬物依存症回復施設の排斥運動が起きていたり、芸能人の過剰な作品自粛といった「偏見」や「排除」といった問題がおきているので、それら支障に対する配慮を頭に入れて予防を行って欲しい、ということを申し入れた。
ところが監麻課は、我々の意見と全くかみ合わず、結局はこれまでの「ダメ。ゼッタイ」の取組みを一切変える気などないとのことなのである。この取組みを変える気はない!という監麻課の根拠は、「日本は、欧米諸国に比べて違法薬物の依存症者が少ない。それはこのダメ絶対運動が効果をあげているからだ。そもそも手を出させないことが重要である。」というものである。
しかし、この説には2つの異論がある。
ひとつは、違法薬物経験者は本当に言われているほど少ないのか?という点である。日本では、本人への聞き取り調査しか実施しておらず、これだけスティグマがはられた日本社会で、果たして調査に正直に答えているのか?という疑問が残る。
これに対して、我々は薬物依存症問題の第一人者である国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の薬物依存研究部部長 松本俊彦先生と、俳優の高知東生さんとYoutubeで取り上げたことがあるが、そもそも自己回答の信ぴょう性には問題があると考えられるので、オランダでは下水の水を汲みとって、薬物がどのくらい蔓延しているかを調査するのである。日本はこういった科学的取組みがなされていない。
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