水害対策、垂直避難の検討を

Japan In-depth / 2019年10月23日 14時21分

水害対策、垂直避難の検討を


上昌広(医療ガバナンス研究所 理事長)


【まとめ】


・水害では避難所より家屋二階への「垂直避難」が安全なことも。


・避難所の受け入れ能力も問題。豪雨の中移動を余儀なくされた例も。


・高齢者保護には住環境把握など個別対応が不可欠。対策見直しを。


 


「水害対策は見直す必要があります。特に高齢者にとって避難所に行くことが、必ずしもベストとは言えません」


相馬中央病院の内科医である森田知宏医師はいう。10月12~14日にかけてわが国を襲った台風19号は相馬中央病院が位置する相馬市を直撃した。


相馬市は甚大なダメージを蒙った。森田医師の同僚である藤岡将医師は、私が編集長を務めるメールマガジン「MRIC」に寄稿し、病院開設以来35年間勤務している同僚の言葉として、「創業以来、こんなにひどいことはない。12日の夜、病院玄関のタイルまで水が来て、『もう駄目だ』と思ったら、そこから水が引いてきた」と述べている(Vol.177 相馬日記 台風編)。台風19号に襲われた地域では、各地で同様の光景が見られたことだろう。



▲写真 相馬中央病院 出典:相馬中央病院 facebook


10月19日現在、全国での死者は12都県で81人。もっとも多いのは福島県で30人だ。浜通り、中通りの広範な地域が被災した。


どうすれば、命を救えただろうか。水害対策の基本は「避難」と考えられている。避難対策を仕切るのは市町村で、今回の台風でも、多くの市町村長は、「避難勧告」、「避難指示」の形で住民に早期避難を呼びかけた。


ところが、多くの住民は避難しなかった。毎日新聞の10月17日の記事によれば、台風が通過した直後の段階で、避難所へ身を寄せていたのは、全住民の1.6%に過ぎなかった。


専門家の中には、その心理を「東北の住民の中には、被害は関東に集中し、自分たちは関係ないと考えた人がいるのではないか」と解説する人もいる。このような心理状態を専門用語で「正常性バイアス」という。沈没船から逃げず、溺れる人の心理状態と同じだ。



▲写真 災害時に設置される避難所の様子。 出典:京都市防災危機管理情報館


メディアも、このような主張を支持する。私が電子版で定期購読している神戸新聞は10月17日の社説で「無駄でも早めの避難を」との見出しの記事を掲載している。阪神大震災の経験もあり、神戸新聞は災害の記事が充実している。今回も多くの紙面を割いて報じている。


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