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私のパフォーマンス理論 vol.47 -科学的思考と競技外の知識-

Japan In-depth / 2019年12月26日 7時0分

私のパフォーマンス理論 vol.47 -科学的思考と競技外の知識-


 為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)


 


【まとめ】



競技者には、科学的思考が必要であり、科学的思考とはシンプルに言えば、物事を説明しきろうとする姿勢のこと
競技以外の世界での常識を知っておくことが科学的思考に効果的
競技者にとって大事なのは、証明ではなく機能させること

 


競技者には、科学的思考が必要だ。日本のスポーツに一番欠けているものかもしれない。科学的思考とはシンプルに言えば、物事を説明しきろうとする姿勢のことだと私は考えている。なぜウォーミングアップをするのか。最も効率が良いウエイトトレーニングとは何か。そのような問いを立て、すでに説明がされているものであればそれを調べ、もし疑問があれば自分なりに納得のいく仮説を立て、説明を試みる姿勢のことだ。その際に競技とは関係のないことの知識が、案外と役に立った。当たり前とは何かを知っておくことで、それが競技に応用できたりまたはあえて当たり前から飛び出すことができたからだ。


競技者は科学者のように考えることは大事だが、科学者と競技者の役割の違いは理解しておかなければならない。競技者にとって大切なのは誰にとっても正しいことではなく、今の自分に機能することを見つけることだ。そこに答えはなく、知識と過去の経験を元にして何が合理的そうかを自分で考えるしかない。


科学的に証明されていない真実と、ただの迷信の違いは誰にもわからない。引いて見れば競技者は、迷信かまだ証明されていない真実かわからないままに賭けをすることになる。仮に正しいトレーニングをやっていたとしても疑いながらするのと、信じ込んでするのでは効果がまるで違う。競技者は、まだわからないことでも、どこかではこれで行けるはずだと自分に思い込ませて突き抜けなければならない。科学的思考とは、この確率を高めるものだ。


この際に、競技以外の世界での常識を知っておくことで精度が高まることが起こる。競技の世界の常識は、他では非常識ということは往々にしてある。専門分野に長くいると知識が層のように重なり、最後の細部の部分にこだわりそれについて議論が交わされこだわるようになるが、一歩引いて全体を見てシンプルに考えてみると、もっと違うやり方が見えることがある。専門家は専門が故に袋小路にはまるリスクがあり、その際に自分を客観的な視点に引き戻してくれるのが競技外の知識だった。


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