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遺伝子検査行う体制作り急げ

Japan In-depth / 2020年2月25日 15時36分

遺伝子検査行う体制作り急げ


上昌広(医療ガバナンス研究所 理事長)


【まとめ】


・遺伝子検査は重症患者だけ。無症状もしくは軽症の患者は見落とされている。


・乗員・乗客、希望者全員に対し遺伝子検査行い、陰性なら自宅に戻せば良かった。


・医師が必要と判断すれば、遺伝子検査を行う体制づくりが必須。


 


新型コロナウイルスの流行が拡大している。2月23日午後9時現在、国内で確認された感染者数は135人。クルーズ船の692人、チャーター便の15人、検疫や隔離・搬送に関わった6人を加えると838人になる。


 この数字は氷山の一角だ。確定診断には遺伝子検査(PCR検査)が必須だが、その必要性は厚労省が判断し、海外の流行地域への渡航・居住歴、あるいは濃厚接触者以外で、検査を受けることができるのは、「入院が必要な肺炎」と診断された人や「治療の効果が乏しく症状が悪化し続ける人」に限定されるからだ。つまり、重症患者だけだ。感染者の大部分は無症状あるいは軽症だ。彼らは見落とされている。


 私は、新型コロナウイルスは既に国内に蔓延していると考えている。都内と埼玉県の2箇所のクリニックで診療しているが、一週間程度、発熱の続く患者が増えたように思う。インフルエンザ検査は陰性だ。通常の風邪なら3-4日程度で治癒するから、これは異例だ。同じような経験は、他の医療機関で働く知人からも聞くことが多い。このような患者の中には新型コロナウイルス感染者もいるだろうが、遺伝子検査ができないため、診断されない。


 このような状態に陥ったのは、アメリカの疾病予防管理センター(CDC)のような「感染症の司令塔」がないことが問題だという論調が強い。今回の流行が落ち着いた段階で、政府は新組織を含む体制強化を検討することを表明している。



図)新型コロナウィルス イメージ図


出典)CDC


 私は、政府機能を強化することで、感染症対策が上手くいくようになるというのは、何の根拠もない仮説に過ぎないと考えている。むしろ、現状を把握してない政治家・官僚、さらに有識者の権限が強化されることで、被害は増大すると予想している。


 その典型が、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の悲劇だ。当初、船内には2,666人の乗客と1,045人の乗務員がいた。総勢3,711人のうち、2月23日現在、692人が感染し、重症は36人、さらに80歳代の男女4人が死亡した。


 日本ではあまり問題視されないが、4名が亡くなったことは大きい。クルーズ船で海外旅行に行くくらいだから、検疫前は元気な人だったのだろう。彼らの死は検疫が原因といっても差し支えない。


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