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米で日本を照らした柔道指導

Japan In-depth / 2020年3月7日 10時39分

米で日本を照らした柔道指導


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)


「古森義久の内外透視」


 


【まとめ】


・「トモダチ作戦への返礼」の柔道交流は東日本大震災救済への感謝。


・伝統ある柔道交流の中、今回は日本柔道家中矢選手の来訪。


・日本柔道は対外友好をも体現する国民的資産。


 


 


アメリカの首都ワシントンでいま語られる「日本」といえば、やはり中国発コロナウイルス感染の拡大である。


なぜ日本が中国以外で世界最多級の感染者を出したのか。安倍晋三首相が中国に遠慮して、ウイルス感染の危険が明白になっても中国からの日本入国を規制しなかったからではないのか。そんな批判的な論評がアメリカのメディアでは増えてきた。同時に日本での活動を予定していた米側官民の人物たちが訪日をキャンセルし始めた。


このところの日本といえば、そんな暗いイメージの話ばかりなのだ。


だがアメリカの首都でのその日本の曇天にほっとする晴れ間をもたらしたのが日本柔道家の中矢力氏の来訪だった。73キロ級で世界選手権を二度、獲得した中矢選手は柔道の国際普及を目的とするNPO法人「JUDOs」(井上康生理事長)からアメリカとの柔道交流のためにワシントン地区に送られてきた。2月20日からの来訪だった。


中矢選手の訪米目的はまず「トモダチ作戦への返礼」だった。


トモダチ作戦というのは2011年3月の東日本大震災での日本側の被災への大規模な救済にアメリカが国をあげて取り組み、米軍の大部隊が投入された活動だった。その主体となったアメリカ海軍への日本側からの感謝の意をこめて、将来の米海軍士官たちに柔道の指導をするというプロジェックトが「トモダチ作戦への返礼」なのである。


つまりワシントン近郊のアメリカ海軍士官学校の柔道部に日本の一流選手を送りこんで、懇切丁寧な柔道指導にあたるという交流活動なのだ。



写真)海軍士官学校で指導する中矢選手(中央)


提供)筆者


この「返礼」はいま日本オリンピック委員会の会長となった山下泰裕氏がNPO法人「柔道教育ソリダリティー」の理事長だったころに始まり、現全日本男子監督の井上康生氏に引き継がれた形の継続事業となった。


井上氏自身も2010年には海軍士官学校を訪れ、全校あげての歓迎を受けて、同校柔道部を復興させた実績がある。伝統ある同校ではなんと一世紀以上前に講道館の山下義韶師範を2年近く柔道教師として採用していたが、その後の100年以上も日本柔道家との直接の交流はなかったという。


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