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高速水陸両用装甲車の開発はムダ

Japan In-depth / 2020年7月18日 23時53分

このため強襲上陸作戦において、沿岸30キロ以内の海域での舟艇は元より、水陸両用装甲車の生存性は極めて低い。確かにEFVの水上航行速度は現用のAAV7の水上航行速度時速13キロの3倍だが攻撃側から見れば大差はない。



▲写真 水上航行モデルのMAV 出典:著者撮影


またAAV7にしてもEFV、MAVにしても通常の下車歩兵分隊(8名程度)が搭乗する通常の装甲車輌よりも遥かに大きく、上陸後も敵の的になりやすい。


実質的に強襲揚陸作戦は不可能であり、実際朝鮮戦争以来米海兵隊は強襲揚陸作戦を行っていない。現代の先進国の軍隊は、膨大な数の戦死者を出すノルマンディーや硫黄島上陸作戦のような作戦は許容できない。敵前上陸をするにしてもそれが可能なのはせいぜい敵の部隊が小規模で、まだ布陣しても本格的な陣地を構築していないような状態だろう。



▲写真 地上走行モードのMAV 出典:著者撮影


だからこそ米海兵隊はEFVの調達を諦めた。その後に企画されたAAV7の近代化も諦めた。海兵隊は通常型の水陸両用装甲車である、8輪ACV(Amphibious Combat Vehicle:水陸両用戦闘車輌)としてBAEシステムズ社の製品を採用した。ACVは重量35トン、乗員3名と下車歩兵13名が搭乗できる。地上最高速度は時速105キロ、水上航行速度は時速11キロ程度だ。水上航行よりも陸上戦闘を重視していると言えるだろう。



▲写真 12)米海兵隊のAAV7 出典:米海兵隊


当初米海兵隊はACV1.1を8輪装輪装甲車にしてACV1.2をより水上速度の速い装軌式装甲車を採用する予定だったが両プログラムは8輪装甲車の1.1に統合された。


現代の揚陸作戦は強力な敵前の強襲揚陸ではなく、敵がいない、あるいは防備を固める前に水上とヘリボーンの両輪で行うことになる。筆者は昨年に英海兵隊の第3コマンドウ旅団を取材したが、その際に同旅団の参謀長からも英海兵隊もそのようなコンセプトで揚陸作戦を行うと説明を受けた。第3コマンドウ旅団は水陸機動団に規模も近いので参考になるだろう。



▲写真 米海兵隊が採用したACV 出典:米海兵隊


英軍の上陸作戦はLSG(Littoral Strike Group:沿岸攻撃群)によって行われる。LSGは空母(クィーンエリザベス及び、プリンス・オブ・ウェールズ)を中核とした部隊で、F-35Bによって部隊のエアカバーや対地攻撃も独自に行える。揚陸艦艇などからなる2個の沿岸攻撃部隊(Littoral Strike Unit)を有している。


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