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高速水陸両用装甲車の開発はムダ

Japan In-depth / 2020年7月18日 23時53分

AAV7の調達数からみれば、MAVの調達は同程度の50輌だろう。将来水陸機動団の普通科連隊(歩兵連隊)が1個増えてもせいぜい70両程度だ。多額の開発費をかけて開発しても一車あたりの開発コストは極めて高価になる。


調達単価はEFVと同程度であれば25億円程度であろう。陸自のAAV7の調達単価の約3.5倍だ。一般に陸自の装甲車輌の調達単価は諸外国のものに比べて高い。調達数が少なく生産レートが低ければ調達単価は30億円は超えるだろう。果たしてそれだけ開発費とコストをかけて調達する必要性があるかといえば、無いだろう。


それよりもむしろ2連結方式のATVを開発する方が、筋がいいだろう。ATVと呼ばれる車輌には各種あり、バギーのようなタイプや、低圧タイアを採用した水陸両用車型などもある。ここでいうATVは履帯式で前後二分割された車体を結合しているタイプの水陸両用ATVだ。


最も有名なのがBAEシステムズ社参加のヘグラド社の非装甲のBv206や、装甲型のBvS10だ。これらは幅広のゴム製の履帯を採用している。履帯は前後の車輌合わせて4つであり、接地圧が極めて低い。また車体結合部分が回転するので、前部車輌と異なった角度で後部車輌の履帯が接地できる。このため岩場やサンゴ礁の踏破性能も高い。また全長が長いので、クレパスや大きな溝などを超すことも得意で、沼沢や積雪地帯などでも高い踏破を有している。



▲写真 BV206に発電機を搭載したタイプ 出典:著者撮影


因みにBvS10場合登攀力は100パーセント、パワー・トゥ・ウエイト・レシオは24.33hp/tである。対してAAV7A1(近代化型)は登攀力60パーセント、パワー・トゥ・ウエイト・レシオは15.83 hp/tである。これだけでも不整地走行性能に大きな違いがあることがわかるだろう。MAVにここまで不整地踏破性能を求めるのは物理的に不可能だ。


このような2連結型ATVはロシア、中国、シンガポールなどでも開発されて軍民両市場で使用されている。我が国でも消防がシンガポールのSTエンジニアリング社の消防型、レッドサラマンダーを採用している。ロシアのZZGT社のGAZ-3344-20は左右の転輪の間が1.52メートルでロシア規格の鉄道の線路上を走ることができる。



▲写真 オーストリア軍が採用したBvS10 出典:著者撮影


繰り返すが敵前の強襲上陸作戦を行わないのであればEFVのような装甲車は必要ない。そうであれば寧ろ揚陸艇にBvS10のような二連結方式ATVを搭載した方が良い。上陸直前まで揚陸艇で運搬し、海岸近くで下ろせばいい。珊瑚礁や防潮堤を超える能力はEFV型の装甲車よりも遥かに高い。


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