陸自 開発実験団評価科長の尊皇攘夷
Japan In-depth / 2020年8月17日 19時0分
経営者とすれば利益が低く、付き合いが面倒くさく、将来性もない防衛ビジネスから撤退を図るのは極めて健全な判断である。
そもそも常識があれば、慢性的に出血サービスしていたら株主から訴えられるであろうことはわかるはずだ。
それに多くの国内防衛装備品は外国製のコンポーネントを使っている。US-2飛行艇のエンジンは英国製、レーダーはフランス製、10式戦車の環境センサーもフランス製だ。通信機や電子機器の多くもカナダやドイツなどの海外製のコネクターなどを多用している。東芝が開発を失敗した空自用の偵察ポッドも主要コンポーネントは外国製だった。
▲写真 海自救難機 US-2。エンジンは英国製。 出典:海上自衛隊ホームページ
田川評価科長のご高説が正しいのであれば、「国産」装備も同様に、パーツの枯渇、高騰は起こることになる。また陸幕は暴利を貪っている外国企業の製品を何で採用することを了承したのだろうか。
国産の装備は深刻な独占、寡占によって守られているために、競争がなく、技術革新やコスト低減から遅れているという問題点もある。例えば海自の艦艇用ジャイロは汎用品と同じだが、東京計器と横川電子の2社が独占している。それぞれ戦闘艦と補助艦艇用をキレイに棲み分けている。
ジャイロ調達は競争入札ではあるが、事実上この二社以外が参入できないようにしている。だが外国製の方が国内製品よりも信頼性も高く、殆どメンテナス・フリーだ。しかも調達コスト約三分の一だ。性能もライフ・サイクル・コストは圧倒的に外国製のほうが高い。なぜこうなるかといえば防衛省による、意図的な「非関税障壁」によって外国企業との競争がまったく存在しないからだ。このために性能、品質、コストを向上させるインセンティブが働かない。これはメーカーの責任よりもユーザーである防衛省、自衛隊の責任が大きい。
商社の人間からは、外国メーカーに自衛隊の人間を連れて行くと、知識が不足しているために通訳できないことが多い、という話をよく聞く。
田川評価科長は海外の見本市に行ったこともなく、海外の軍人やメーカーの人間と議論をしたこともないのだろうか。基本的に開発実験団は海外視察をしない。
また海外の専門誌の調達関連の記事すらも読んだことがないのかと思ってしまう。自衛隊では海外の専門誌などを読んで勉強すると「おたく」とか「マニア」と揶揄されて出世ができない傾向が強い。
自衛隊は、ひたすら外界との接触を拒み、組織内で自分たちは正しいとお互いを褒めあっているかのようだ。だから世界の現状に疎く、自衛隊内の「身内」としか付き合わず、世間では通用しない理屈をこめて、自己正当化し、組織防衛を図る傾向が強いと思われる。
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