バイデン政権、温暖化シフト【2021年を占う!】米・環境政策
Japan In-depth / 2020年12月28日 11時0分
有馬純(東京大学公共政策大学院教授)
【まとめ】
・バイデン政権は気候変動問題を国家安全保障問題と位置づけ。
・意趣返しでなく超党派で支持得られる温暖化政策の推進を期待。
・日本はアジア諸国も受け入れられる策に向け日米協力の道探れ。
■ エネルギー環境政策の揺り戻し
バイデン政権の誕生によって米国のエネルギー温暖化政策は大きく変わることになる。
共和党と民主党の両極化がしばしば指摘されるが、なかでも地球温暖化問題は党派性が最も強い分野の一つである。共和党支持者は地球温暖化問題に関してそもそも懐疑的な人が多いのに対し、民主党支持者は温暖化問題を重視しており、とりわけ民主党内で影響力を増している左派リベラル層はその傾向が強い。
トランプ大統領は就任以降、パリ協定離脱、化石燃料企業への規制緩和、クリーンパワープランの解体、自動車燃費規制強化の凍結等、オバマ政権のエネルギー温暖化政策を次々に否定してきた。民主党の左派リベラル層にとって歯噛みしたくなるような4年間であったに違いない。それだけに政権交代による揺り戻しも大きいということだ。
■ 野心的な公約
バイデン次期大統領の選挙公約では2050年までにエコノミーワイドでネットゼロエミッション、2035年までに技術中立的基準により電力部門のCO2排出ゼロを達成、連邦所有地における石油・ガス採掘権のリースやフラッキングの停止、800万の国産PVパネル、6万の国産風車を設置、2030年までにすべての新築建築物をネットゼロエミッション化、5年以内に400万の既存建物の省エネ化、クリーンエネルギー自動車の購入支援、全国50万の充電ステーションの設置、脱炭素化技術開発の支援等の野心的な項目が列挙された。
国際面ではパリ協定への再加入、政権発足100日以内に気候変動サミットを主催し、各国に野心レベルの引き上げを働きかけ、緑の気候基金への出資、海外における石炭関連融資の停止等が盛り込まれている。
これらを実施するため、4年間で2兆ドルの予算を投入するとしている。バイデン次期大統領の当初の公約は10年間で1.7兆ドルであったのだから、3倍近くに膨らんだことになる。
またバイデン次期大統領の選挙公約で注目を要するのは、パリ協定のコミットメントを果たしていない国からの製品輸入に対しては国境調整課金を賦課するという部分である。これはEUが検討中の炭素国境調整メカニズムと同じ考え方に立つものであり、今後の貿易政策にも大きな影響を与えうる。
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