「日本改鋳 2」「憲法改正が近づいた」続:身捨つるほどの祖国はありや 5
Japan In-depth / 2021年5月9日 19時51分
今は昔、吉田茂が朝鮮戦争に際してアメリカの再軍備の要求を、憲法を理由にして抵抗したという話を思い出す。時代は変わったのである。アメリカが日本の軍事力を必要とする度合いが大きくなったのである。
しかし、この激変は中国に進出している企業、中国との取引が大きな割合を占める企業にとっては、藪から棒のなんとも大きな衝撃である。
いや、企業にとってだけではない。中国には14万人の日本人が3か月以上の滞在資格で在留しているという。そうした人々にとってみれば、ことは経済だけではない。幼い子ども連れの家族の人々もあるであろう。各個人の人生の最重要な局面である。
もし私の子どもが仕事で中国にいるとしたら、孫もいっしょに暮しているとしたら、私はなにを、どう心配しなければならないのか?果たして個人の力の及ぶ範囲内に解決策はあるのだろうか?
したがって私は、憲法改正に向かって勢いよく旗振りを始めた政権に対して、同時に対中関係への賢明な対応を求めずにはいられない。
対応と書いたが、実質は、対中利害を異にする日本とアメリカとの調整である。前提には、アメリカがアメリカのするデカップリングを当然のように日本にも求めてくるという予測がある。日本にはアメリカとは違った対中の立ち位置がある。もちろん、政権も与党もよくわかっていることではある。ただ、ここまでアメリカの要求が強まってくると、果たして日本は独自色を残すことができるのかどうかと案ずるのである。
しかし、憲法改正が間近なことになってしまった以上、国内での世論は大きな揺れを示すことだろう。現に、日本人の間で中国は人気がない国だと言われて久しい。しかし、好きであろうとなかろうと、経済的には日本にとって極めて重要な国である。その日本経済にとって、すなわち日本人にとって重要な部分が剥落していくことにどう備えるのかということを真剣に考えなくてはならない。そこへ追いつめられてしまったようである。
実のところ私は、これまで中国批判をしてきた人々の声は一挙に大きくなり、その他の声は響かなくなる。それで良いのか、ということでもある。
ここで私は、賢明な対応という言葉で、中国とのデカップリングに対する対応以上のものを期待している。アメリカからの実質的な独立である。別れ話であろうはずはない。対等に近い関係への築き直しである。基本的人権、民主主義、法の支配といった価値を普遍的なものと考える国同士の再結合である。
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