「日本改鋳 2」「憲法改正が近づいた」続:身捨つるほどの祖国はありや 5
Japan In-depth / 2021年5月9日 19時51分
上記の菅首相の憲法改正発言の前、ユニクロの柳井氏がウイグル問題についてたずねられて、政治的な発言は控えるという趣旨の回答をした。それは考え抜かれた回答であったに違いない。しかし、そうしたやり方で、果たしていつまで持つだろうか。心配である。はっきりしているのは、中国との取引を失えば売上の20%を失う日本の企業はユニクロに限られていないどころか、多数存在しているという事実である。それは日本政府にとっては、日本人にとっては重大事であるが、アメリカ政府にとっては重大事ではない。
第二は、上述の理由により、日本経済が失われたままの状態が続きそうなことである。
政高経低。アメリカとの安全保障の繋がりは絶対的である。これまでの日本は、自力で立っている国ではなかった。アメリカの支えなしには存立し得ない国であった。サンフランシスコ条約発効後69年。それは日米安全保障条約発効後69年でもある。年数の一致は、もちろん偶然であろうはずもない。占領体制の継続だった旧安保条約の改定に成功した岸信介首相を、日本人は退陣に追い込んだのである。
▲写真 米国大使館前で日米安保条約改定に反対するデモ隊(1960年6月10日) 出典:Bettmann/Getty images
今となって振り返れば、自力で立つことの叶わない国の国民の、内側に向けての八つ当たりにも似た爆発だったような気がする。どれほど岸信介が悔しく、悲しかったか。自力で立っていないということは、束縛されていると言い替えることもできる。核の時代には、実はその方がよりふさわしい。日本はアメリカと中国の核兵器のはざまに置かれていて、アメリカの核の傘の下にいるのである。
▲写真 岸信介首相は、改定された新安保条約の発効を待って1960年7月15日退陣した。(写真は1957年) 出典:Bettmann/Getty images
「もの心ついてからこの方、何の因果で、私は、日本国民でありながら、日本政府の政策に反対でありつづけたのか。」と、50余年前に加藤周一が書いている。(『羊の歌』加藤周一著作集14巻434頁 平凡社1979年刊)「すでに一九四一年に、私は東条内閣の戦争に賛成できなかった。当時の閣僚のひとりが、二〇年後に再び起こって、新しい軍事同盟を結ぼうとしたときに、その政策にも賛成できなかった。」もちろん、東條内閣の商工相から無任所軍需省次官に転じた岸信介のことである。
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