「ダメ。ゼッタイ。」ポスターを貼らないで!薬物依存症家族会の悲痛な叫び
Japan In-depth / 2021年6月3日 12時39分
■降ってわいた「大麻使用罪創設」
なぜ日本では、薬物依存症者の包括的支援が進まず、これほどまでに再犯率が高いのであろうか。それは薬物問題の解決策が「刑罰」にあると考え、科学的データを信じない、時代遅れの為政者が一部いることが大きいと思う。
この厳罰化を強硬に推進しているのが厚生労働省 医薬食品局 監視・指導麻薬対策課(以下「監麻課」)だが、彼らのやり口を見ていると、取り締まる自分たちの既得権や「逮捕権」という権力を手放したくないのではないか?と勘ぐってしまう。それほど彼らの情報公開、啓発、予防教育のあり方は偏りがあり作為的だ。
例えば、5月14日には、同課がとりまとめる第6回「大麻等の薬物対策のあり方検討会」が開かれたが、その直後に共同通信やNHKをはじめとしたメディアから突如「大麻使用罪創設」という報道がなされ、我々のような薬物問題に関わる支援者や当事者、家族は不意打ちに驚かされた。大麻使用罪の具体的な検討段階にもない状況であるにもかかわらず、このような報道がなされたことは、世論を厳罰化の方向に誘導しようとした感が否めない。
そして以前にも書かせて頂いたが、現在国連主導で進む違法薬物の個人の少量の使用者に対する処遇は「非犯罪化」が推し進められており、刑罰ではなく薬物使用者の困りごとに対するソーシャルワークで解決しようという流れになっている。(参照:「『国際薬物乱用・不正取引防止デー』厚労省への要望書」)
このパラダイムシフトは当初は懐疑的に見られていたが、2001年にポルトガルが薬物の「自己使用目的の使用および所持を非犯罪化する法律」制定を英断し、大きな成果を上げたことから注目され、シフトチェンジされた。ちなみに「非犯罪化」とは「合法化」と違い、薬物の使用と所持は違法ではないが、販売は合法ではない。
2015年のワシントンポストでもこのポルトガルの驚きの成果が取り上げられ紹介された。(参照:ワシントンポスト紙「なぜポルトガルでは薬物の過剰摂取による死亡者がほとんどいないのか?」)
非犯罪化を進めたポルトガルでは、薬物の過剰摂取で亡くなる人は、3/100万人とヨーロッパで2番目に低くなっており、日本と同じく刑罰で取り締まろうと厳罰化を推し進めるイギリスは44.6/100万人とヨーロッパワースト7位で、EU平均10.2/100万人を大きく上回っている。
なぜ非犯罪化で薬物問題が解決していくのか?ポルトガルの取り組みの一部をご紹介すれば納得頂けることと思う。
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