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装輪ATVは空挺・島嶼防衛作戦に有用な21世紀の「ジープ」

Japan In-depth / 2021年6月19日 11時0分

ATVとFAVの違いは、前者が主に不整地の走行能力を重視しているのに対して、後者は速度と武装を重視していることだ。だが湾岸戦争後は両者の特徴をあわせ持った軍用のATVが開発されることが増えている。





先述のようにATVは攻撃能力や速度よりも不整地踏破性が重要視されている。それはランドローバーなどの通常の4×4やFAVの行動が難しい沼沢地や豪雪地帯、山岳部などでの使用が想定されているからだ。また偵察やパトロールなどの任務に使用されるにしても、長距離の偵察などの使用に耐えるようなペイロードが要求される場合もある。





一般に初期の民間用のATVは跨座式シートを有し、棒形ハンドルで操縦されるタイプが多かったが、軍用では並列複座型のモデルが多くなっている。また貨物を積載したトレーラーを牽引することを前提としたモデルも多く、偵察やパトロール以外に前線での物資の輸送や補給、火器などの装備のプラットフォームなどとして使用されるケースが増えている。誤解を恐れずに言えば昔の軍隊の駄馬、ロバのような役割が期待されている。





ATVには大きな低圧タイアと浮揚性の車体を備えて、水上航行が可能なものもある。80年代に登場した英国のスパキャット社の社名ともなったスパキャットは、これは84年に英軍にATMP(All Terrain Mobility Platform)として採用され、55輌が調達された。主たる配備先は空挺連隊、空中機動旅団、海兵隊だ。









▲写真 スパキャット社が開発したATMP 出典:Supacat





ATMPは軽量で水に浮く、水上航行が可能な車体に6個の31×15.5×15幅の低圧タイアを装備している。エンジンはフォルクス・ワーゲンの78馬力のターボ・ディーゼルだ。運転席のハンドルはバイクのような横一文字の形をしている。通常の4×4車輌にくらべて接地圧は極めて小さく、斜度100パーセントの坂も登ることができる。最大速度は路上で時速64キロとなっている。兵員を輸送する場合、運転手を含め最大10名が搭乗できる。





ペイーロードは1,000キロであるが、走行性能を犠牲にするならば1,640キロまでの貨物を搭載できる。また最大2トンキロの牽引力がある。専用のトレーラーFLPT(Fork Lift Pallet Trailer)は1.7トンの貨物を搭載できる。例えば英空挺部隊の砲兵隊では車体及びFLPTに弾薬を搭載して、さらに105ミリ軽砲(L118又はL119)を牽引して運用してきた。また貨物の積み卸し用に専用のクレーンを搭載すればクレーン車として使用することもできる。南アの空挺車輌、ゲッコーはこの流れを汲む車輌と言ってよいだろう。





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