根拠なき自民党の防衛費GDP比2パーセント公約
Japan In-depth / 2022年4月8日 23時0分
そして問題なのは自民党のいう防衛費GDP比2パーセントの積算基準根拠だ。よく知られているように我が国は1976年の三木内閣の閣議決定以降、防衛費をGDP比1パーセントに収めることを国是としてきた。だが我が国の防衛費の対GDP比率の算定基準と、NATOのそれとでは算定方法が異なる。自民党の公約ではどちらの基準を採用するのか述べていない。
日本政府は21年度当初予算で0.95%だと説明しているが、NATOが国防関連予算として盛り込んでいる退役軍人年金や日本の海上保安庁に相当する沿岸警備隊の経費、国連平和維持活動(PKO)拠出金などは除外されている。このため、NATO基準で計算すると日本の防衛費の対GDP比は1.2~1.3%になる(令和3年度財政制度分科会の防衛関連資料)。
つまり、どちらを基準にするかで数値は約4割も異なることになる。「アメリカから言われた」から従うのであれば、NATO基準による数字を採用すべきだろう。筆者はこの件を防衛省の防衛大臣記者会見で岸信夫防衛大臣に質したが、明確な回答はなかった。自民党の有力議員にきいても、公約の算定基準は決めていなかったという。これは政権与党の公約としては極めていい加減、無責任だと言わざるを得ない。
実は、日本の防衛費の明示されている金額自体が怪しい。粉飾され、国民に実態がわかりにくいように世論操作されているといっても言い過ぎではない。
防衛費は毎年8月末に概算要求が出る。これがたたき台となって財務省などと調整して政府予算の額が決定される。だが第二次安倍内閣からこの概算要求の一部が「事項要求」して金額を入れずに要求されている。
その金額は概算要求時には明らかにされず、政府予算案の時に明らかになるが、概ね2〜3千億円である。以前は金額が明示されていた予算が、突如金額を出さなくなったことに対する法的な根拠や合理的な説明は何もない。
例えば新聞の見出しで「防衛費概算要求、5.3兆円」というのは「事項要求」を含まない金額だ。「事項要求」が3千億円ならば本来は「防衛概算要求、5.6兆円」となる。5.3兆円と5.6兆円では世論の印象も随分変わるだろう。だが新聞やテレビは防衛省の発表通りの「事項要求」には触れずに「事項要求」抜きの金額を報道する。このため国民は概算要求の金額を低めに認識している。
更に問題なのはこれまた第二次安倍政権から始まった次年度予算と、当年度の補正予算の一体化だ。本来補正予算は予算編成時に想定していなかった支出、例えば大規模な災害派遣や、現在のような原油価格の急騰によって、著しく燃料費が高騰した場合等に対する追加の支出を手当するものだ。それは財政法第29条に明記されている。
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