仙谷由人・元官房長官の命日に寄せて
Japan In-depth / 2022年10月12日 23時0分
贈答品に偽造した郵便爆弾が爆発し、妻を亡くした土田國保・警視庁警務部長(当時、後の警視総監、防衛大学長)は、筆者が学生時代に所属した東京大学運動会剣道部の先輩だった。世代の近い方からは「仙谷(の弁護)にやられた」という話を聞いた。後日、このことを告げると、仙谷氏は「事件があった時間帯に1人だけパチンコをしていたのがいたのよ。アリバイが証明され、検察の主張は信頼されなくなったのよ」と語った。
話が脱線した。元に戻そう。鈴木議員から連絡を受けた仙谷氏はすぐに動いた。私は議員会館の仙谷氏の部屋で、事情を説明した。仙谷氏は目を閉じて黙って全てを聞いていたが、私の説明が終わると同時に目を見開いて、「メッ」と大喝した。そして「こんな大きな問題なのに、警察も検察も法務省も、考えもなしに動くことがけしからん。この事がどんな影響を与えるか。困るのは誰なんだ、患者だろう!」と怒った。その表情は沈痛だった。私はそれまで、医療関係者以外で、仙谷氏のように大きな憤りを表明した人を見たことがなかった。
当時、医療系団体は厚労省にアプローチしていたが、仙谷氏は「そんなことやっても無駄。起訴するのは検察なんだから。法務省に言わんと」といって、司法研修同期の法務省幹部に電話した。法務省幹部には「あれは筋が悪い。もう数日早ければ、起訴はとめたのに。今さら無理だ」と言われたそうだ。
仙谷氏は「こうなれば法務省にアプローチをしても動かない。世論勝負するしかない。メディアがどう報じるかだ」と言った。法務大臣のような権力者に「陳情」しても、もはやどうにもならないと判断したようだ。
すると、鈴木氏は「すぐに支援の会を立ち上げて、署名活動をしよう」と提案した。当時、医療界では幾つかの署名活動が始まっていた。筆者に、この事件を伝えてくれた鈴木医師が所属する亀田総合病院でも院内で署名活動が始まっていた。まず私はこのようなグループと連絡をとった。
3月9日に、加藤医師の恩師である佐藤章・福島県立医科大学産科、婦人科教授に連絡がつき、私は「国会議員の仙谷氏、鈴木氏が応援してくれる」と伝えた。佐藤教授からは「はじめて支援してくれるという人が現れた。どこにでも伺う」と言われた。翌日、都内で初めて佐藤教授と仙谷氏を含む我々のチームが面談した。
我々は有志を募り、『周産期医療の崩壊をくい止める会』を立ち上げた。代表は髙久史麿・日本医学会会長にお願いした。髙久氏は東京大学第三内科の恩師で、医療界でずば抜けた実力の持ち主だ。「これは放置できない。喜んで協力する」と快諾いただいた。別の医学界の重鎮にもお願いしたが、「立場上出来ない」と断られた。
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