仙谷由人・元官房長官の命日に寄せて
Japan In-depth / 2022年10月12日 23時0分
▲図3 全国紙における「分娩休止」の記事数。日経テレコンを用い、瀧田盛仁氏(東京大学医科学研究所、当時)が調査
▲図4 全国紙における「医療崩壊」の記事数。日経テレコンを用い、瀧田盛仁氏(東京大学医科学研究所、当時)が調査
そして、07年7月に厚労大臣に就任したのが舛添氏だった。マスコミが「医療崩壊」に関心があったのは09年までの2年間(図5)。舛添氏の厚労大臣任期と重なる。舛添氏は世論の後押しと、参議院のねじれを利用して、日本医師会が抵抗する医学部の定員増などの政策を断行した。舛添改革を応援したのは、民主党の仙谷氏や鈴木氏だった。仙谷氏は、医療に関することなので超党派でやっていこうと汗をかいてくれた。当時、様々な医療問題で超党派の議員連盟が出来たが、仙谷氏の存在抜きでは語れない。
▲図5 全国紙での「医療崩壊」の記事数。日経テレコンを用い、岸友紀子氏(東京大学医科学研究所、当時)が調査
大野病院事件の活動を通じ、仙谷氏と佐藤教授は信頼関係を構築していった。2008年8月20日、福島地裁は加藤医師に無罪判決を下した。その日、仙谷氏は福島を訪問し、鈴木氏、世耕氏とともに『福島大野事件が地域産科医療にもたらした影響を考える』シンポジウムに出席した。そこで「医療という行為と刑法との関係、今回の事件を教訓にして、法務省・検察庁には深い洞察をしてもらいたい」と発言した。
この時、仙谷氏は「佐藤先生は人物よ。あの人がおらんかったら、ここまで来てないわな」と評した。
佐藤教授が立派だったのは、患者視点を忘れなかったことだ。無罪判決後は、自ら寄附を申し出て、『周産期医療の崩壊をくい止める会』とともに、「妊産婦死亡の遺族を支援する募金活動」を始めた。佐藤教授は「判決が出るまでは動けなかった。しかしながら、これからは違う。百万言を費やすより行動で示すべきだ」と語った。
▲写真3 左から仙谷由人氏、佐藤章氏(筆者提供)
佐藤教授は、仙谷氏への感謝の念を忘れなかった。写真は2009年11月の東大医科研講堂で開催された『現場からの医療改革推進協議会シンポジウム』の模様だ(写真3)。仙谷氏は発起人の一人で毎年参加していた。当時、病気治療中だった佐藤教授は「どんなことがあっても仙谷さんに御礼を言いたい」と参加されたのだった。
2010年6月28日、佐藤教授は肺がんで亡くなった。当時、官房長官だった仙谷氏は福島市内で行われた葬儀に駆け付けた。一参列者として弔問の列に加わり、そのまま帰京した。義理人情に篤い人だった。
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