仙谷由人・元官房長官の命日に寄せて
Japan In-depth / 2022年10月12日 23時0分
仙谷氏に続き、与野党を問わず、多くの議員が国会でこの問題を取り上げた。
マスコミも取り上げた。特に効いたのがワイドショーだった。ワイドショーと我々を繋ぐきっかけは舛添要一・参議院議員(当時)だった。舛添氏からも「この問題を解決するのは世論。国民が如何に考えるかだ。国民に広く問題を伝えるには、テレビ、特にワイドショーが報じないとダメだ。政治家だけがいっても国民は信じない」と言われた。
ここで舛添氏と我々を繋いでくれたのも、鈴木寛氏だった。「自民党で日本医師会に染まらずに動ける実力がある中堅議員は、舛添、塩崎(恭久)、世耕(弘成)さん」と言い、彼らと繋いでくれた。その後の彼らの活躍はご存じの通りだ。
話を戻す。ワイドショーだと言われても私はどうしていいか分からなかった。当時、私が唯一知っていたテレビ関係者は、東京大学剣道部の2年先輩で、丁度、フジテレビの『とくダネ!』を担当していた宗像孝さんだった。久しぶりに携帯電話でコンタクトしてみた。事情を伝えると「難しい。被害者がいるのに、医師を擁護することはできない」と回答された。当時、医師不足は喧伝されておらず、「医師=金持ち」というイメージができあがっていた。医療事故が起きれば、「医療ミス」で医師を断罪するのが常だった。
ただ、この事件は福島県で起こった。宗像氏は福島県出身だ。地元のことで関心もあったのだろう。彼は「後輩に頼まれた」と、優秀な女性スタッフを紹介してくれた。東大医科研の研究室にきてくれた彼女に、およそ2時間をかけて状況を説明した。私の説明を聞いた彼女は「これは医師が可哀想ではなく、この事件をきっかけに産科が崩壊したら、国民が可哀想ですよね。動きます」と言って戻った。
数週間後、彼女から電話があり、「見つけましたよ。放送も決まりました」と連絡があった。4月27日の放送で、この事件が取り上げられ、その中で産科医逮捕をきっかけに、全国の産婦人科医がお産の取り扱いを辞めようとしている現状、およびそのような病院に通院している妊婦の悲痛な声が紹介された。「見つけましたよ」とは、番組で証言してくれる妊婦のことだ。
▲図2 当時の全国紙の紙面の情況 瀧田盛仁氏(東京大学医科学研究所、当時)作成
『とくダネ!』での報道をきっかけに、他局や全国紙も、この問題を扱った(図2)。一連の報道後、「医療ミス」という論調はなくなり、2006年には「分娩休止」に関する記事が急増、翌07年には「医療崩壊」が国民のコンセンサスとなった(図3、 4)。
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