「石原さんとの私的思い出8」続:身捨つるほどの祖国はありや24
Japan In-depth / 2022年11月15日 8時45分
牛島信(弁護士・小説家・元検事)
【まとめ】
・銀座の『菊川』という店で、石原慎太郎氏に誘われ、新潮社の名編集者として名高かった坂本忠雄さんと会食した。
・石原さんは、「牛島さん、大いに期待しているんだ、がんばってくれよ」と、語気を強めて私を督励してくれた。
・石原さんという人は、決して自分を相手に押しつける人ではない。他人にものをたずねるときには、謙虚そのもののような態度の方だった。
石原さんとは、何度も食事をご一緒したことがある。シティ・クラブ・オブ・トーキョーではランチだったが、夕食のことがほとんどだった。
東麻布にある富麗華での夕食が最初にごいっしょに食事したのだったか。見城さんが二人を招いてくださったのだった。あれが石原さんに初めてお会いしたのだったか。それなら、以前に書いている。ナタナエルのナをニュと手書きで訂正してくださったのだった。
それから10年近くのちのこと、銀座の『菊川』という店にお誘いいただいたときには、新潮社の名編集者として名高かった坂本忠雄さんと3人の席だった。石原さんが坂本さんを私に紹介したいということでお誘いくださったのだったか。それとも、坂本さんがおみえになるとは予め知らずにいたことだったのか。
お二人は、2019年に『昔は面白かったな 文壇回想録』という本を出しておられる。新潮新書だった。
いま調べてみると、坂本さんは1935年のお生まれの方のようだが、そのときには1932年と1935年の3年間の違いについては、気にも留めていなかったので、年齢のことはなにもお話していない。
私が、その3年間の違いの重要性に気づいたのは、最近『日本の生き残る道』を幻冬舎から出していただく際に、「まえがき」を綴り、そのおりに、平川祐弘先生と石原さんが1歳違いでどちらも日本が戦争に負ける以前の日本を13歳以前に知っている方々なのだと意識してからだ。
13歳が自己確立について重要な年齢であることは、心理学の本で読んだことがあった。
その「まえがき」のなかで、私は13歳の石原さんについて
「既に、その年齢で、石原さんのアイデンティティの一部としての、誇り高い祖国としての日本が確立していたのである。」と書いた。
その後に、平川祐弘先生、石原さん、そして大江健三郎氏、寺山修司についての感想が加わる。
銀座にあったその『菊川』という店で夕食をご一緒したのは、2007年10月4日のことだった。木曜日だった。
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