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雑誌メディアはデジタルの世紀においても夢と時代を運ぶ宝船なのか その歴史から紐解く(下)

Japan In-depth / 2022年11月18日 17時29分

 『WEC』について、WEB上に散見されるblogなどでは極めて大仰に「地球上のあらゆる物が紹介されている」カタログ誌…という形容を見かけることもあるが、それはあまりにも大袈裟。同誌はあくまで数ドルの大判カタログであり、誌面の都合上、本当に「すべて」が紹介できるわけもない。昔の電話帳ほどの厚さで、世界の「すべて」が収録されてはかなわん。


 しかし当時としては、この誌面が画期的なスタイルだった。要はヒッピー社会向けに、DIYを主体としたメールオーダー可能な様々な品々を解説、記載したカタログを発行した。これは誌面上に展開された「amazon」と考えることもできる。森羅万象をテーマに据えたカタログ誌は、ヒッピー社会に、またその後のアメリカに大きな影響を与えた。誌面を眺めてみると、現在のGoogle的発想およびAmazon的発想は、52年前の『WEC』の発行によりアメリカ人に植え付けられた概念だったとさえ考えられる。



写真:推定6,000人の若者が参加したデモ「ラブイン」(カリフォルニア州ロサンゼルス 1967年3月26日)


出典:Bettmann/Getty Images


 今となっては、当たり前の発想だが、現代Bettmann/Getty Imagesに通じる思想と概念の先駆けが『Whole Earth Catalog』であり、それこそがこの雑誌を「伝説」に仕立て上げた。『WEC』に巡り合う機会のほとんどなかった日本人にとって、GAFA的発想が生まれなかった遠因ではないかと想像してしまうほど。現在アメリカの各種デジタル・プラットフォーマーは、すべてこの雑誌の影響を受けているのではないか…そう考えても不思議はない。


 1971年に一旦、休刊宣言を出したにもかかわらず、その人気はその後も留まらず1980年9月、『The Next Whole Earth Catalog』が刊行され、復刊。こうした流れが『WEC』シリーズを複雑化させている要因ともなっている。1998年まで発刊された『WEC』ファミリーは全34巻となっている。


 


■「Stay Hungry, Stay Foolish」はジョブス自身の言葉ではなく『WEE』からの引用


『WEC』は、スティーブ・ジョブズをして「インターネットがない時代のGoogle」とまで形容させており、彼自身もこのカタログに影響を受けたうちの一人であるのはあまりにも有名。彼が2005年、スタンフォード大学の卒業式で行った名高いスピーチのうち「Stay Hungry, Stay Foolish」というフレーズはあまねく知られるところだが、これは彼自身の言葉ではない。1974年に発行された雑誌『Whole Earth Epilog』(『WEE』)の裏表紙に記された一節だ。


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