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雑誌メディアはデジタルの世紀においても夢と時代を運ぶ宝船なのか その歴史から紐解く(下)

Japan In-depth / 2022年11月18日 17時29分

 『POPEYE』の成功は『Olive』を産み、1988年『Hanako』を世に送り出した。この頃、日本の雑誌業界は2兆円の売上を達成。雑誌の黄金期を築き上げる。潤沢な広告予算を財源に女性誌が百花繚乱となったのも、この頃だ。


 一方、1995年前後にインターネット・メディアが登場すると、その波は出版業界のみならず、メディアを静かに飲み込んで行った。高度成長期、バブル期と飛ぶ鳥を落とす勢いだった雑誌作りも少しずつその形式を変えた。いわゆる情報誌、カタログ誌と呼ばれたカテゴリーは、概ねインターネット・メディアに飲み込まれた。「文春砲」などと謳われる週刊誌たちも、ネットとのハイブリッド型へと移行。その発信方法を模索している。


 リアル・マガジンが隆盛を誇った1980年代後半のキャッシュとマテリアルな世界から時代は変わり、1960年代のヒッピーの時代ではないが、心の豊かさを追い求める時代へと緩やかに流れているようにさえ思える。そして2020年代、もはや新しく創刊される雑誌は珍しくなり、情報の担い手としても、より変革を迫られている。


 それでも、「誌面」を媒介し物理的に手元に残る雑誌は、その時代を切り取った世相の鏡であり、時を越え、「その時代」を後世へと運び出す。果たして雑誌は、その利点を活かし、後世まで生き残ることができるのか。


 一方現在、隆盛を誇るデジタルメディアは、日々情報は垂れ流し、行く情報の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。サービス終了の際は、コンテンツ・アーカイブさえ残らないケースも散見される。デジタルメディアは、時代を切り取り後世へと、それを伝える媒体へと変貌を遂げるのか。


 ヨーロッパの動乱により16世紀までにガゼット文化が広まったように、ロシアによるウクライナ侵攻は、デジタルメディアにより、あらゆる情報が世界へと拡散されている。


だが、その情報をパッケージ化し、後世に残す機能を備えない限り「有史」継続の担い手へとは成長しない。


 雑誌は、デジタルメディアに情報だけ吸い上げられ、その情報の垂れ流しに消費されるだけの存在となるのか。それとも、デジタルの力を借り、情報の大海原を渡る知識の宝船へと姿を変えるのか。我々は、その時代の岐路を眺めている。


(了)


トップ写真:Googleオフィスの外観(ニューヨーク市 2022年7月4日)


出典: Photo by John Smith/VIEWpress via Getty Images


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