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雑誌メディアはデジタルの世紀においても夢と時代を運ぶ宝船なのか その歴史から紐解く(下)

Japan In-depth / 2022年11月18日 17時29分

 ジョブズ信者の解説を読むつけ、この引用が「これは『Whole Earth Catalog』最終号から…」という記述を多く見出すことができるが、ジョブズの引用は『Whole Earth Epilog』からであって『WEC』からではないという事実をしっかり踏まえたい。 


知ったかぶりした知識人が「ジョブズの言葉は、『Whole Earth Catalog』最終号から引用され…」などと自説を繰り広げるのは滑稽でさえある。ジョブズ本人の言葉ではないにもかかわらず「ジョブズはこの一句で何を伝えたかったか」など仮説を展開しまくる信者のおめでたさ。ジョブズは彼自身のスピーチの中で確かに「最終号」と口にはしている (On the back cover of their final issue)。しかし、「Stay Hungry, Stay Foolish」というフレーズは1974年に発行された『Whole Earth Epilog』の表4に記載されているのは事実。引用する側は、その点を補足すべきであり、鵜呑みにし語り続けるのはいかがなものだろうか。



写真:1974年に発行された『Whole Earth Epilog』の表4に記載されているフレーズ


出典:筆者提供



ブランド本人が休刊イベントを開催しているだけに正式な最終号は72年の『The Last Whole Earth Catalog』。それを引き伸ばしたとしても74年に刊行された改訂版『The (Updated) Last Whole Earth Catalog』であるべきだろう。ジョブズによる引用はあくまで『WEC』の「エピローグ」版からである点、ここに念を押しておく。


 71年6月21日に開催されたとされる『WEC』の休刊イベントでは、ブランドの意思を継ぐものへの対価として2万ドルが用意され、うち1万5000ドルがフレット・ムーアという人物の手に渡った。75年、ムーアは「ホームブリュー・コンピューター・クラブ」を結成、フリーソフト、情報共有などの概念を打ち出したとされる人物。このクラブには、ジョブズ、ビル・ゲイツ、スティーブ・ウォズニアックも参加していたという嘘のような縁がある。ウォズニアックが「Apple Ⅰ」の試作版を持ち込んだのも、このクラブ。伝説がまた次の伝説を生み出した。


 ジョブズとブランドはそもそも面識があり、『Whole Earth Epilog』はジョブズからのリクエストにより、ブランドが直接送った一冊である事実は、ブランドの口から語られている。ヒッピー世代の言葉など今の若者が知る由もないだろうが、このジョブズのスピーチにより『WEC』人気は再燃した。 


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