雑誌メディアはデジタルの世紀においても夢と時代を運ぶ宝船なのか その歴史から紐解く(下)
Japan In-depth / 2022年11月18日 17時29分
■『Whole Earth Catalog』から生まれた『宝島』や『Popeye』
この伝説のカタログがアメリカのみならず、実は『宝島』や『Popeye』など日本のサブカル雑誌誕生にも多大な影響を与えた。
『宝島』の前身は、1973年に発行された『Wonderland』。植草甚一責任編集を掲げ、晶文社より発売された。編集長は高平哲郎さん、アートディレクターは平野甲賀さん。連載陣は、植草さんご本人に続き、片岡義男さん、佐藤信さん、筒井康隆さん。執筆陣には、淀川長治さん、キャロル、小林信彦さん、菅原文太さんという錚々たるメンバーがずらり。特別企画も「ロックンロールは地球の嘆き」とEarthを意識させるテーマとなっている。
写真:左がwonderland創刊号 右が第2号
出典:筆者提供
「月刊新聞VOW!」は、後の『宝島』における大ヒット企画であることをご存知の方も多いだろう。「VOW」は実は「Voice Of Wonderland」の略。このコーナーの扉には、「2$」の表示も見え、穿った見方をすれば、『WEC』を模倣しているようにも思われる。『Wonderland』はやや小さめながら、当時の日本の雑誌としては非常に大きな判型からして、『WEC』を意識している。
商標問題により本誌名は2号まで発行後、3号目からは『宝島』を名乗ることになった。サブカル感は保たれたものの、WEC感は薄れ消え去ってしまった。のちの『VOW』により独自の文化を築き上げたが、その独自性ゆえに、やや閉じた世界へと向かったように思える。
一方、平凡企画センターから『Made in U.S.A. catalog 1975』が週刊読売6月号増刊として発売された。こちらはWECに影響を受けたカタログ誌の代表。マガジンハウスの元最高顧問・木滑良久さんによれば、これは1970年に創刊された『アンアン』の中に「ショッピングガイド」というページがあり、これがヒントになったと述べている。
ただし、この流れを組んだ1976年創刊の『POPEYE』の誌面は、確かにカリフォルニアテイストをまとったカタログ誌であり、誌面を眺めると『WEC』を想起されるには十二分。様々な影響を受けた潮流の結果、『WEC』が具現化された誌面作りになったと理解しても間違いではないと考える。
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