MRJ事業の危うさ
Japan In-depth / 2023年2月21日 18時0分
しかもこのいい加減な調達計画を財務省が査定し、国会で承認されている。これは民主国家として極めて異常である。
これは装備を開発する際にも問題となる。本来開発費と調達費がパッケージで実際の装備の調達コストとなる。現状では開発・生産のコストを見積もらずに開発が了承されていることになる。
そんなことだから北海道でしか使えない90式戦車を「我が国固有の環境に適した戦車を自主開発」と自画自賛して何の疑問も持たないのである。
このような現状は無論メーカー側だけに非があるわけではない。むしろ官の側に大きな問題がある。何故このようなことがまかり通ってきたかというと、防衛航空宇宙産業が経産省、防衛省などといった関連省庁の天下りの受け皿として機能してきたからである。四社ある航空機メーカーが一社になれば単純計算で天下り先は四分の一に減る。
またあれこれ天下り用の業界団体や特殊法人、財団などを業界につくらせるときも企業の頭数が多い程カネが集めやすい。因みに航空機メーカー各社の天下りの受け入れは三菱重工62名、川崎重工49名、富士重工26名、新明和工業14名、IHI 34名となっている。これに各社の子会社、業界団体を含めれば概ねその倍程度の天下りの面倒を見ていることになる(週刊ダイヤモンド 2007/06/23号)。役所は単年度予算を隠れ蓑に、航空産業の育成よりも、自分たちの天下り先の確保を優先してきたとしか思えない。
そもそも戦後の経産省(かつての通産省)の航空機行政は失敗の連続である。我が国は武器輸出の自粛を国是としているのであれば、航空産業を産業として自立させるためは、民間機分野に産業育成の力点をおくべきなのは自明の理であった。民間機部門が育てば、基礎研究費なども民間と案分でき、結果として防衛予算の節約にもつながったはずである。
かつてYS-11製造の際、国策会社・日本飛行機製造が設立され、各メーカーはそれに協力するという形をとった。ところが各メーカーはコスト削減に励むことなく、積み上げ式でコストを計算し、〝親方日の丸〟の日本飛行機製造に請求した。
結果としてYS-11の製造コストは高騰し、360億円の損失を計上して日本飛行機製造は清算された。同社の社員はちりぢりとなり、せっかく獲得した旅客機の製造と販売のノウハウは失われた。通産省がメーカー各社に厳しくコスト削減を求め、また断固として旅客機産業を育成する方針を持っていれば、今頃はボーイングやエアバスに匹敵するメーカーに成長し、航空産業の再編もスムーズに進んでいたかもしれない。同様な高コスト体質、補助金漬けと批判の多かった、寄り合い所帯のエアバスはパートナー各国政府の補助金に支えられ、30年ほどかけて黒字化を実現している。
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