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MRJ事業の危うさ

Japan In-depth / 2023年2月21日 18時0分

ところが我が国では三菱重工、川崎重工、富士重工、新明和工業の4社も航空機メーカーが存在する。この4社が互いに競合しているのであればまだ話はわかるのだが、戦闘機は三菱、大型機は川崎重工、飛行艇は新明和などと棲み分けがなされており、競合原理が働いていない。また、ジェットエンジンに関しては昭和30年代に一度石川島播磨重工(現株式会社IHI)に一本化されたが、その後通産省の意向もあり、昭和40年代に三菱重工と川崎重工が参入している。





ヘリコプターも三菱重工、川崎重工、富士重工の3社も存在する。欧州ではユーロコプター(独仏、EADS傘下)と、アグスタ・ウエストランド(伊英、フィンメカニカ傘下)の2社に集約されている。ヘリコプターは軍用民間用の垣根が低く、民間市場に参入し易いはずなのだが、我が国の3社は防衛需要の米国製ヘリのライセンス生産に偏重、民間市場の開拓を怠ってきた。このため国内の民間市場はおろか海保、自治体などの市場も殆ど欧米メーカーに抑えられている。





この競争力に欠ける防衛航空産業を維持、あるいは「振興」するために、戦後天文学的な税金が投入されてきた。特に防衛庁の調達は各社に仕事を分配するために一年あたりの調達数を少なく抑え、長期にわたって細々と生産している。当然調達単価は高額になる。





一例をあげると陸自の攻撃ヘリ、富士重工がライセンス生産したAH-1の生産は20余年にわたり、その1機あたりの調達コストは米国の8倍ほどとなっている。しかも調達が完了した頃には機材は旧式化し、また初期の機体は寿命を迎えている。つまり調達された約90機が纏まって運用されることはほとんど無かった。





一般に諸外国では兵器の調達に際しては調達数と金額が予め決定され、メーカーと契約する。例えば新戦車500輛を五年間で調達し、契約金額は5000億円といった具合である。ところが我が国では単年度予算制をとっていることもあり、防衛省は明確な調達数、総額、所用期間が示されず、なし崩し的にズルズルと生産される。つまり必要とされる装備をいつまでに、どれだけ、いくらで調達するという計画がないのである。換言すれば「調達が五年後に完了しようが、30年後に完了しようがかまわない、調達に100億円で済むのか、あるいは500億円かかるのか分かりません」と言っているに等しい。





このような防衛省の調達は我が国をとりまく将来の脅威の見積もりをせず、また国防のグランドデザインや戦略、ドクトリンもなく、ドンブリ勘定で装備の調達を行っていることになる。





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