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MRJ事業の危うさ

Japan In-depth / 2023年2月21日 18時0分

また、70年代、747の開発で倒産の危機に瀕したボーイングは金策のために、我が国に737の製造販売権売却の打診をしてきたが、経産省(それと業界も)はこれを拒否した。737は現在でもボーイングのドル箱である。日本航空機製造が経営を続けて、737の生産が行われていれば我が国の航空産業の現状はかなり変わったものになっていただろう。





これら例を見れば経産省(旧通産省)に航空振興の政策立案能力が欠如し、むしろ航空産業の活力を奪って育成を阻害してきていることは疑いない。通産省のビジョンと指導力の不足が旅客機ビジネスを廃業に追い込んだと言っても過言ではあるまい。





経産省の政策は猫の目のように変わり、業界を支援するための補助金も中途半端な金額で終わり、結果を出せないことが多い。その何よりの証拠が現在の防衛航空産業の現状である。メーカーは防衛庁需要に寄りかかり、企業体質の強化も、リスクをとって積極的に世界の市場に打って出ることもしなかった。天下りを受け入れている限り仕事に困ることはない。こうした官と民のもたれ合いの体質が日本の航空産業の「産業」としての自立を阻んできた。





リージョナルジェットの国産開発にしてもほかにやりようがあったろう。例えばPXへの転用を前提にすれば、かなりの開発費及びリスクを減らすことができたはずである。PXのエンジンは4発でるが、旅客機としては運用コストの安い2発の方が適しているため主翼の再設計が必要であるが、それでも単独開発よりは格段に安く上がる。実際PX開発に際してはそのような構想も存在した。





現在PXは海自が60~80機程発注することになっているが、更に海自の現用の電子戦機、連絡機、輸送機、早期警戒期機など後継機、更には海上保安庁などのYS-11などの需要(既に海保は他の機種を採用してしまった)を纏めれば100機を越えるほどの機数を確保できたろう。また現在保有している政府専用機は大型の747だけなので使い勝手が悪い。地方の小さな空港でも離着陸でき、運用コストの安い小型政府専用機の必要性が検討されているが、そういう需要も取り込めるだろう。





纏まった官需があれば、旅客機製造コストも低減でき、価格競争力が上がる。同時にPXも開発費を案分でき、しかも量産化により生産コスト、調達コストも削減できる。





その上官需だけで採算分岐点の三分の一あるいは半分を消化でき、リスクを大幅に軽減できる。更に既にPXという「軍用機」としての運用実績があれば、信頼性の面でエアラインの印象もよくなるだろう。しかも万が一、リージョナルジェットの販売が思わしくなく、事業から撤退するにしても、100機以上の官需で生産した機体のメンテナンスや部品供給の需要があるので、撤退に伴う損失を極小化できる。





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