MRJ事業の危うさ
Japan In-depth / 2023年2月21日 18時0分
もし何の対策も講じないまま放置すれば、我が国の防衛・航空宇宙産業は緩慢な死を迎えるか、外国資本の傘下に入って生き残るかしか道はあるまい。
我が国の安全保障にとって独自の防衛航空宇宙産業とその生産基盤の維持は必要である。これを維持発展させるためには民間機市場への参入が必要である。いまこそ内閣府、あるいは首相官邸が音頭をとって、長期的視野に立った政策を立案し、業界の自立と再編成を促すべきである。
このような背景もあり、産業界では航空宇宙の分野では防衛省の「官需」に頼らないで民需に活路を見いだそうという動きもでている。
既に多くの国内メディアで報道されているように、三菱重工はリージョナルジェット(100人未満乗りの小型旅客機)市場に参入すべく、70~90人乗りのMRJ(三菱リージョナルジェット)の開発を進めている。
複合材料を多用して機体を軽量化、また新型の効率的なエンジンを搭載するなどして、他社製品より2割ほど高い燃費と広いキャビンを売り物にしている。08年から本格的な開発を行い、12年に就航予定となっている。開発費用1200億円、事業化の費用は約7000億円といわれる一大プロジェクトである。
6月に行われた第47回パリ航空ショーではMRJの胴体モックアップが公開された。また、約1200億円とされている開発資金のうち、経産省は既に400億円を提供することを決定している。成功すればYS-11以来の国産旅客機の誕生となる。
現在我が国の防衛航空産業は防衛省の需要と、民間分野ではボーイングやエアバス、エンブラエル、ボンバルディアなど航空機メーカー大手の下請けがその売り上げの柱となっている。しかし防衛費は今後大幅に増加される可能性は低く、先細りが予想される。また外国の下請け仕事に甘んじ、総合的に航空機を開発する能力をもたなければ、将来的に自主開発能力は勿論、高い技術を維持できる保障はなく、韓国やトルコ、中国など中進国、途上国に仕事を奪われていくだろう。
我が国は「武器輸出三原則等」により現状では兵器の輸出ができない。であるならば、海外に輸出可能な旅客機を開発するという方針は正しい。
航空産業は先端技術の塊であり、単に航空機メーカーだけではなく、各種コンポーネントから素材産業まで、幅の広い経済および雇用の波及効果がある。また、航空技術の基礎研究は軍用機にも応用できるので、その成果は軍用機=自衛隊用機体の開発にも応用できる。そのような観点からも国産旅客機開発はメリットがある。
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