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MRJ事業の危うさ

Japan In-depth / 2023年2月21日 18時0分

だが、筆者にはMRJのプロジェクトは途中で挫折し、経産省が投資する資金は死に金になると予想している。その理由として第一に、当の三菱重工にプロジェクトを何が何でも成功させるといった気魄が感じられない。第二に、このような巨大プロジェクトには三菱のみならず他の国内メーカーの協力が必要だが、そのようなコンセンサスが業界にない。第三に政府に防衛航空産業育成のグランドデザインが欠如しており、明確なビジョンがないことが挙げられる。





防衛省、国交省、財務省など関係省庁の間に充分なコンセンサスが出来ていない。そんな現状のまま、思いつきで小出しの補助金を出しても、軍事において下策とされる「兵力の逐次投入」を行うに等しい。





6月に開催されたパリ航空ショーにおいて、三菱重工がスポンサーとなってMRJプロモーションのためのレセプションが日本大使公邸を借りて行われた。ところが筆者の得た情報によると参加者約300名の内日本の業界関係者が約250名、フランス人が30名、その他20名ほどがスウェーデン人など他の外国人であったという(なお、在仏日本大使館に確認したところによると参加者は約280名、内外国人が90名とのことである)。いずれにしても国際的な航空ショーでのレセプションとして日本人の比率が多すぎる。





パリ航空ショーは英国のファンボロウ航空ショーと並び、世界中の航空業界関係者が集まる航空業界最大のイベントである。レセプションを開くのであれば、国内の業界関係者よりも潜在的顧客である各国のエアライン、プロジェクトに投資をしてくれそうな投資会社や銀行、リース会社(旅客機はリースで運用されることが多い)、メディア、特に航空専門誌などの関係者を優先的に招待すべきだろう。





海外への情報発信の千載一遇のチャンスで、日本人同士で飲み食いしているようではやる気を疑われても仕方あるまい。在仏日本大使館によると外国人の参加者を絞ったのは、「大使公邸のキャパシティの問題」であるとのことだったが、ならば初めからホテルの宴会場を借りればいいだけの話である。大使公邸を借り切るメリットはない。





別な事例を挙げよう。





三菱重工は民間ヘリコプター市場に参入するためにMH2000なるヘリコプターを開発したことがある。これは機体、エンジンともに同社の開発によるもので、99年から10年間で100機を販売する予定だった。しかし、現在に至るまで売れたのは僅か数機で、事実上販売から撤退を行っている。原因はマーケティングの不足、特に甘い需要予測と販売体制の不備である。実績のない後発メーカーが、実績もない自社開発のエンジンを搭載して売ろうというのだから不人気は容易に予想できたはずである。同社の関係者によるとエンジンは騒音が酷く売り物にはならなかった、という。三菱重工には長年「軍需」に依存しきたためか「民間航空機メーカー」としての自覚、言い換えれば当事者意識が欠如しているといわざるを得ない。





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