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MRJ事業の危うさ

Japan In-depth / 2023年2月21日 18時0分

そもそもMRJの計画自体に無理がある。まず三菱重工の航空宇宙部門の規模が過小である。先に述べたように、MRJの場合、開発費が約1200億円、事業化に7000億円ほどかかると見られている。三菱重工の売り上げは06年度で3兆600億円、経常利益は830億円ほどで、その事業規模は世界の防衛産業メーカーのランキングで第4位のノースロップグラマンに近い。だが、航空宇宙部門は売り上げが5000億円弱、経常利益は約144億円に過ぎない。開発費の内400億円は国が負担するとしてとしても、残りは800億円。この金額は同社の航空宇宙部門の経常利益の5.5年分であり、事業化の経費7000億円は実に同社の経常利益の半世紀分に相当する。同社は三菱グループや協力を表明している富士重工、銀行、商社などに資金面での協力を呼びかけているが、かなり厳しいだろう。





しかも現在のところ、国は事業化に際してどこまで経済的な支援を行うか明らかにしていない。筆者は旅客機開発に関しては明確な戦略や覚悟があれば兆円規模の国費を支出してもいいと思っている。エアバスも30年ほどか嘗て黒字化を実現したが、これも参加各国の財政的支援があってのことである。





だが、明確なビジョンがないままズルズルと小出しに援助をする、あるいは逆に途中で放り投げるのでは単なる税金の無駄遣いに終わる。YS-11はそれで失敗したが、その教訓から何も学んでいない。









▲写真 名古屋空港で初飛行する三菱の新型リージョナルジェット(2015年11月)出典:Photo by Kaz Photography/Getty Images





MRJは採算分岐点が350機といわれているがこれもかなり楽観的な数字だ。この市場はカナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルの寡占状態である。先行メーカーは既に基本モデルを元に座席数を増減するなどしたバリエーションを販売してファミリー化を進めている。エアラインは同一機種のファミリーを採用すれば、調達コスト、乗員の訓練、メンテナンス、部品のストックなどロジスティックスのコストを安く済ませられる。この点でも後発は不利だ。エアラインは基本的に保守的で、長年の信用と実績のあるメーカーの製品を好む。





それはもし新型機が欠陥に起因する大事故を起こせば、被害は補償などの直接的な面に留まらないからだ。同機種は原因が究明されるまで飛行が停止されるのでエアラインは運行面でも大きなダメージを蒙る。1940年代末、英国のデ=ハビランド社は世界初のジェット旅客機、コメットを開発して人気を博したが、金属疲労に起因する墜落事後が続発し、コメットが市場から姿を消しただけ同社も経営が傾き他社と合併する羽目になった。





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