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平成12年の年賀状恵比寿のシャトーレストランでの時間/伊藤整全集のことなど

Japan In-depth / 2023年4月26日 18時0分

平成12年の年賀状恵比寿のシャトーレストランでの時間/伊藤整全集のことなど


牛島信(弁護士・小説家・元検事)





【まとめ】


・23年前、冬の外でのランチ。「こんなに気持ちの好い日はあと何回あるだろうと数えてしまう」と年賀状に書いた。


・私も焦らなくなった。結局は死に到るだけだと悟ったということなのか。


・そろそろ覚悟を決めるべきか。本人は未だ早い気がしている。


 



 年頭にあたり皆々様の御健勝をお祈り申し上げます。


 昨年のご報告を一、二、申し上げます。


 春。香港へ行き、酔っ払い海老にまたお目に掛かりました。香港返還もこの海老の味には何の変化も与えなかったようです。


 夏。濃いサングラスをかけ、白いボルサリーノの帽子をかぶって陽光の中を散歩に出掛けました。しかし、日本の夏に外歩きをすると汗が出てたまりませんでした。


 秋。五十歳になったばかりの或る土曜の昼下がり、西麻布、広尾、白金台をあてもなくさまよい歩きました。どうやらそのエリアの人々の平均年令を確実に上げてしまったようです。


 冬。恵比寿ガーデンプレースにあるオープンエリアのレストランで、仕事を兼ねたランチをとりました。こんなに気持ちの好い日はあと何回あるだろうと数えてしまいます。


 通年。以上の例外が年に数日ある他は、毎日忙しく立ち働いています。昔、数学で単調増加という言葉を習いました。私の「日の要求」がそれです。


 通年、その二。伊藤整の全集を毎晩ベッドの中で読んでいます。最晩年の彼から始めましたが、最近同じ歳になりました。これから若くなる一方です。



 


「恵比寿のガーデンプレースにあるオープンエアのレストラン」とは、ジョエル・ロブションのテラスを指す。23年前。私は或るフランス人のビジネスパーソンと「仕事を兼ねたランチ」を食べたのだ。冬のことだったようだが、外での食事がとても快適で、「こんなに気持ちの好い日はあと何回あるだろうと数えてしまいます」と書いているとおりだった。その日から23年が経っているが、その間に「こんなに気持ちの好い日」が何回あったことか。なんとも心もとない。


あれは、仕事がうまく行っていたこともあって爽快さが倍加されての気分だったのだろう。しかも私は50歳になったばかり。未だまだ先のことなど意識しない、未来が無限だとすら感じもしない年齢だ。フランスで二番目の金持ちが日本の生命保険会社の買収をする手伝いをして、首尾よく成功したのが2年前、1998年だった。


私は依頼者に頼まれて、英語で取締役会に参加できる日本人を何人も推薦した。日本の大手都市銀行の専務でアメリカの子会社のトップも務めていた方や大蔵省の財務官だった方を取締役に、外国の銀行の日本支店長だった方を監査役にお願いした。監査役にはもう一人、私の主宰する法律事務所の弁護士にもなってもらった。私自身は、日本の生命保険会社の仕事をしていたから役員には就任せず、顧問弁護士として関与した。そうなのだ、あれから25年も経ってしまったのだ。亡くなった方もいる。


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