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平成12年の年賀状恵比寿のシャトーレストランでの時間/伊藤整全集のことなど

Japan In-depth / 2023年4月26日 18時0分

私は自分の考えをそう話した。


そんな話を何回かしたあげくに彼が言い出したのが、「僕は本気で礼子さんに惚れてしまった。」だったのだ。


私は、読者のそれぞれの心のうちに別々の人物を想像させ創造してしまう言葉というものの凄さを改めて感じさせられた


もしそれが、著名な女優が映じた話題作である映画であれば、こんな食い違いは起きないだろう。画面に実際に映っている「西脇礼子」は具体的なイメージとしてあるから二人の間に大きな食い違いは起きようがない。「西脇礼子」を演じている女優の範囲を超えない。


しかし、文字は違う言語は異なる


それが芥川が『侏儒の言葉』のなかで引用した王世貞の「文章の力は千古無窮」という言葉の意味なのかと思い知らされた気がしたのである。


ついでに、私は、もしChatGPTに画像を描いてもらったら、西脇礼子と言う女性の外観は一つになるのかどうか、心はどうなのかに興味が湧いた。つまり、生成AIは文学を陳腐なものにするのかという疑問である。


日本半導体復権への道』(牧本次生 ちくま新書 2021年刊)を読んでいる。著者は1937円生まれで日立の専務を経てソニーの専務も務められた方である。本の著者紹介によれば、半導体産業における標準化現象とカスタム化のサイクル現象が「牧本ウェーブ」と呼ばれるほどの方のようだ。


私は、産経新聞の「トレンドを読む」という寺田理恵さんの書かれた欄で「日本の半導体産業の盛衰を日本の立場からたどる」本として教えられた。失われた30年に問題意識を持ち、その原因を1985年のプラザ合意にたどっている私としては、なんとも興味深い本として読み始めたところだ。


162頁からの半導体戦争の始まりから185頁の昇る米国、沈む日本を読むと、いったいなにが起きたのかが具体的にわかる。殊に176頁に示された「日米半導体協定前後のDRAMシェア推移」という図を見ると納得感がある。世界80%のシェアから10%まで転げ落ちてゆく急傾斜の坂道がそこにはある。どれほどの日本人の涙がその過程で流されたのか。想像に余りある。


谷崎潤一郎の『夢の浮橋』を読む私は、同時に現在と未来を生きることを強制されている。読書は多分野に及ばざるを得ない。私にとって最近とてもショックだったのは、或る大学の先生に「私は若い学生に言うんですよ。もう日本はダメになるのだから、外国に行って活躍しなさい、と」と言われてしまったことだ。留学しなければダメですよというのではない、外国に行って、もう日本には戻ってこない方が良いという意味なのだ。


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