沖縄基地問題の新局面③ 「自衛隊配備」で漂流する政治
Japan In-depth / 2023年6月3日 0時0分
目黒博(ジャーナリスト)
「目黒博のいちゃり場」
【まとめ】
・沖縄離島へのミサイル配備で地元住民の不安が増している。
・一般県民は生活苦に直面しているためもあり、「台湾有事」への危機感は薄い。
・自衛隊配備問題で、左右の両極が激突し、穏健派は躊躇している。
昨年冬、まさかのウクライナ戦争勃発で、にわかに「台湾有事」の可能性が語られ始めた。それ以来、沖縄では、この新しい「危機的な事態」をめぐって、さまざまな議論やイベントなどが行われてきたが、状況は刻々と変化している。しかも、政治や有識者たちの対応が必ずしも的確でないため、争点が明確になっているわけでもない。
この記事では、八重山諸島(与那国、石垣など)への自衛隊配備問題への反応を取り上げ、沖縄政治の漂流ぶりとその背景を考えてみたい。
■ 石垣市議会で2本の意見書可決の背景
安全保障の専門家の多くは、専守防衛から一歩踏み出した岸田政権の防衛力強化策を高く評価する。だが、「有事」の際に真っ先に戦域になると予想される、八重山の住民に対する情報提供の遅れは、不評を買った。
それに加えて、政府が離島へのミサイル部隊の配備と、ミサイル長射程化による反撃能力の保有を謳ったことで、一部の地元住民は、中国のミサイルの標的になるとの恐れを抱く。安保3文書の閣議決定直後の12月19日に、石垣市議会で可決された政府に対する2本の意見書は、地元住民の不安を象徴する。
どちらの意見書も、「長射程ミサイル配備」に対する住民の懸念を訴え、十分な説明を要求するものであった。会期末が迫っていたため、一本化できず、全く同じタイトルの意見書が2本可決された。
▲写真 地対空誘導弾ペトリオット(PAC-3)出典:航空自衛隊
保守系が発案した意見書は、「情報公開と住民への十分な説明を強く求める」もので、全会一致で可決された。一方の革新系が中心の意見書は、長射程ミサイルの石垣への配備への懸念がより強調される(賛成11、反対9、欠席1)という違いがあった。
興味深いのは、過半数の議員(11名)が両方の意見書に賛成したことだ。十分説明をしてこなかった政府への不満と、「有事」になれば巻き込まれる不安が、入り交じる。
■ 自衛隊基地に関する住民説明会で疑念は消えず
石垣市では、議会の要求に応じて、3月22日に石垣市、沖縄防衛局、陸上自衛隊(以下、陸自)石垣駐屯地による住民説明会が開催された。しかし、駐屯地の開設がほぼ1週間前の16日であり、順序が逆になってしまった。
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