他国の10倍の価格の防弾板で調達が進まぬ陸自最新型防弾ベスト
Japan In-depth / 2023年12月22日 23時0分
清谷信一(防衛ジャーナリスト)
【まとめ】
・危機管理産業展にて防衛省は陸自の最新型個人装備である18式防弾ベストを展示。
・着用時の不快感、法外な単価による調達数の少なさからベストの普及は進まず。
・開発、調達能力を抜本的に改善する必要がある。
■倍増する防衛予算の使い道
政府与党は2021年の衆議院選挙において、防衛費をそれまでのGDP比1%から2%に倍増することを公約に掲げた。岸田政権はそのため防衛力整備計画で本年度からの5年間で43兆円、年平均8.6兆円の防衛費を確保するとしている。
果たしてその倍増した防衛予算は適切に使われるのだろうか。筆者は大変悲観的に見ている。防衛省、特に防衛装備庁と陸上幕僚監部(陸幕)は装備調達の開発と調達の当事者としては失格レベルだ。恐らく増額された予算で国防が適切に強化されないだろう。予算を増やすことで、コスト意識が薄れて不要な装備を買うなど害の方が大きくなるのではないか。
■危機管理産業展で展示された欠陥ばかりの18式防弾ベスト
本年10月11~13日に行われたにビッグサイトで開催された危機管理産業展において、防衛省は陸自の最新型の個人装備である18式防弾ベストを展示した。だがこれは調達単価がべらぼうに高く、諸外国からみれば欠陥品だった。
18式は砲弾の破片などから身を守る、防弾繊維が入ったソフト・アーマーとその上に、小銃弾などから身を守るための防弾板が装備されたプレート・キャリアとからなっている。ソフト・アーマーでは小銃弾は防げないからだ。
だが、このプレート・キャリアは他国の軍隊のもののように、単体では使用できない。自衛隊以外の軍隊ではプレート・キャリアは単体で装着して使用する。基本的に任務に合わせて複数の種類の防弾ベストを使い分ける。
18式はソフト・アーマーに防弾版を装着すると17キロ前後になるので、下車歩兵は重量が過多で動きが鈍くなる上に、体力の消耗が激しくなる。近年の個人装備は50キロ以上にもなるので、どこの軍隊もその負担軽減に力を入れている。
またソフト・アーマーは体を覆う面積も大きいので熱中症にもなりやすい。このため他国では胴体のバイタルパートだけを防護するプレート・キャリアのみを装着して戦うことが少なくない。これはアフガニスタンやイラクなどの戦訓が影響しており、現在ではプレート・キャリアは先進国だけではなく途上国でも普及している。
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