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他国の10倍の価格の防弾板で調達が進まぬ陸自最新型防弾ベスト

Japan In-depth / 2023年12月22日 23時0分

だが陸自だけはその例外であり続けた。だが、自分たちだけ例外であり続けることに何の疑問も持って来なかったようだ。陸自は米軍だけではなく英仏豪など他国とも共同演習を行っているが、他国の軍隊がプレート・キャリアを使用しているなか、自分たちが重たい現用の防弾チョッキ、3型改を使用しており、それに何の疑問を感じて来なかった。共同訓練から学ぶ意識があったのだろうか。


筆者は陸幕に18式に関する取材をおこなった。その際に18式は2014年度から開発が行われ、当時はソフト・アーマーにプレートを装着したものが主流だった、と説明を受けた。だが当時でもボディ・アーマーの過重が既に問題となっており、米軍でも2009年「不朽の自由作戦」から、従来のボディアーマと組み合わせて使う、約10キロと軽量な「SPCS(Soldier Plate Carrier System)」を導入しており、2021年から更に進化したな「MSV(Modular Scalable Vest)」が配備されている。


英陸軍は2015年に歩兵個人装備の一新を開始した。これはボディ・アーマー、プレート・キャリアだけではなく、ヘルメット、バックパック、ポーチ類など50以上のアイテムからなっている。英国防省3年間で27,000セットを調達、初年度である2014年度は14,000セットを調達、更にオプションで10年間に90,000セットを調達する計画であった。


写真)DSEIで展示された英陸軍が2025年から導入する個人装備 筆者提供)



 



写真)DSEIで展示された英陸軍の現用個人装備もプレートキャリアを装備している 筆者提供)


これらの事実から開発当時既に、プレート・キャリアの普及は進んでいたと言って良い。単に陸幕が世界趨勢を理解していなかったと言ってよいだろう。


開発から採用まで9年もかかるのはスローモー過ぎる。開発完了時には旧式化している。またその時の現用装備と同じものを開発するのではなく、将来を見越して開発するものだ。そのような能力が装備庁にも陸幕にも欠如している。


 自衛隊は国産装備開発の理由に「我が国独自の環境に適したものが必要」と枕詞をつけるが、夏場は気温が40度前後になり、高温多湿な気候は「我が国独自の環境に適したものが必要」ではないのか。確かに18式にはソフト・アーマーのクッションが取り外し式となっていたり、随所にヒートマネジメントに基づいた工夫されている。だが17キロの重量は下車歩兵に過大だし、体を覆う部分が多く、熱がこもるのは防げない。他国のようにプレート・キャリア単体で使うという発想が出ないのが不思議だ。


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