ボストン・ウェルネス通信その1:薬で痩せるのはずるい!?
Japan In-depth / 2023年12月29日 7時0分
大西睦子(米国ボストン在住内科医師)
【まとめ】
・2型糖尿病治療薬である『オゼンピック』に減量効果が認められた。
・「肥満」を病気でなく自己責任だとする世論が薬での減量への足かせとなっている。
・筋肉量の減少や老け顔などの影響もあるため、専門の医師に相談しながら利用すべき。
「オー・オー・オー・オゼンピック・・・」、リズミカルで気分が楽しくなる曲。これは、ボストン在住の私が、テレビでよく見かける2型糖尿病治療薬「オゼンピック」のCMソング(1)です。ちなみに賛否両論ありますが、米国とニュージーランドのみ、処方薬の消費者向け直接広告(D T C広告)が許可されています(2)。
そんなオゼンピックの減量効果が、米国では大きな話題になっています。ボストン・グローブ(2023年3月21日)(3)は「まず体重が減った。そしてオゼンピックをめぐるドラマが始まった。ハリウッドとTikTokが、オゼンピックが奇跡の減量治療薬であることを発見してから、事態は激しくなっている」と状況を描写しました。
ただしハリウッドだけではなく、医学界からもオゼンピックは大きな注目を浴びています。成人の約42%は肥満という米社会で、オゼンピックをめぐり、どんなドラマが起きているのでしょうか?
● オゼンピックとは
オゼンピック(一般名:セマグルチド)は、ウゴービと同じく「グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体作動薬」に属し、消化管ホルモンの一つのGLP-1の作用を模倣します。GLP-1は、食後「脳に働きかけて食欲を抑える」「胃腸の動きを鈍くし食べ物の消化を遅らせる」「インスリンの分泌を促し(血糖値を下げるのに役立つ)、血糖をあげるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑制する」など、さまざまな働きをもちます。
現在、米国では、高用量のセマグルチドを含むウゴービは、「減量薬」として米食品医薬品局(FDA)に承認されています。一方、オゼンピックは「2型糖尿病の治療薬」として承認されていますが、体重減少ももたらします。
日本でも、オゼンピックは2型糖尿病の治療薬として承認されており、先日、2024年2月22日にウゴービの発売が発表されました(4)。
オゼンピックを適応外使用、つまり 2 型糖尿病ではなく減量を目的とした場合、月に 1,000 ドルほどの費用がかかります。それでも、ボストン・グローブ(2023年10月24日更新)(5)によると、「保険会社の抵抗や、長期的な副作用を測定するには時期尚早かもしれないという懸念にもかかわらず、GLP-1と呼ばれる新しいクラスの食欲抑制剤の売上は、今年合計で180億ドルを超えることが予測されている。これは、より低価格のジェネリック医薬品を含むコレステロール治療薬の売上高80億ドルの予測をはるかに上回る」と報告しています。
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