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「平成31年の年賀状」団塊の世代の物語(3)

Japan In-depth / 2024年4月11日 21時43分

「そんなことありない。





峰夫は遺言書を書いていて、そこには財産はぜんぶ悠次郎にやるってあるもの」





「えっ」





大木は言葉をうしなった。





そうとなれば話は根底からちがってくる。





「なんだ、そうだったの。





認知されたご次男がすべての財産を相続するってわけだ。





残る問題は、ご長男の遺留分だね。相続人は子どもふたりだけだから、遺留分は四分の一だ。だからご長男は広島興産の株式の四分の一にこだわるとはおもえないなあ。





仮にご長男なる方とあなたのご次男との二人で当分に株をわけても、9%はあなたがもっているんだから、ご長男とされている方は91%の半分、45.5%しか持ち分がないわけだ。」





英子がうす笑いを浮かべた気がした。錯覚かもしれないなと大木はおもいなおす。





「峰夫氏の遺産にどんなものがあるのか知らないけれど、ご長男としてみれば頑張って広島興産の株式の四分の一、最大45.5%を自分のものにしてみたって意味ないよね。悠次郎さんが峰夫氏の持っていた株の四分の三、つまりあなたの9%を除いた81%の四分の三。すくなくてもあなたとあわせて過半数は絶対だ」





そこで大木はスマホをとりだして計算をはじめた。





「ご長男の株は、遺言があるから、相続分どおりでも20.25%しかない。あなたの9%と悠次郎さんが相続する側だから過半数で支配権を握ることだけはまちがいない」





「でも、弁護士で作家の人が書いた『少数株主』っていう小説では、少数株主の権利があるってあった」





英子は意外と勉強していた。





「それに悠次郎が死んだら、広島興産は悠次郎の奧さんと子どもに行くんでしょ」





「問題?」





「悠次郎の子どもは奥さんのもの。だから、会社ごと他人のものになっちゃう」





「おいくつ、悠次郎さんて」





「33」





「じゃ、まだまだ大丈夫なんじゃないの」





「あなた、ずいぶん大ざっぱね。人間なにが起きるかわからないのよ」





「そりゃそうだけど」





「私が心配しているのは、広島興産の経営権





会社はいろいろな上場会社の少数株主なの





それをあなたに頼みたい。





親子上場している会社がねらい目だって、いつも峰夫が言っていた。だから、たくさんの会社の少数株を持っているのよ。





それを、生かしていきたいの。





私がやりたい。





私のアンチエイジングよ」





<そうかい。でも、そいつはまずいかもしれない>と大木は心のなかでつぶやいた。





大木自身が弁護士として、そうした少数株主の側の代理をいくつもしているのだ。





広島興産なる会社の利害と、そうした大木の代理している少数株主の利害が一致するとはかぎらない。





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