「令和2年の年賀状」団塊の世代の物語(4)
Japan In-depth / 2024年5月16日 21時0分
人生が有限だなどと考えたこともなかったのに、そう感じ始め、結局のところこんなていたらくなのだ。
と言いながらも、『日本の建築』I(隅研吾 岩波新書)は手ごたえがあって面白かった。そしてすぐに『統計学の極意』(デイヴィッド・シュピーゲルハルター 草思社)を読んでいるのだが。
確かに、今はそう感じ始めているのだ。
「人生は、実は移動祝祭日の連続ではない」。そりゃそうだ。当たり前だ。
そんなことを考えるということは、こちらに慣れ切ってしまっているのだろうか。
今年に入ってから、私はスマホに2つの英文朗読を入れて、暇さえあれば聴いている。
サマセット・モームの『要約すると』、“Summing Up” と、ヘミングウェイの『移動祝祭日』、“A Moveable Feast” である。英語の学習を兼ねているところが、なんとも我ながらいじらしい。散歩をしているときにも、眠っている私のベッドの横でも、いつもどちらかが声を上げ続けている。
すこし慌て始めているのである。このまま死んでしまっては、酔生夢死になってしまう。今の時点で自分というものを要約してみると、ほとんど存在してすらいなかったことに思い至って愕然とするのだ。
石原さんとの約束を守れなかったことについて、「いや、あなたは未だ生きているから」と励ますように言ってくれた編集者がいた。つい最近のことだ。そのとおり。そのときにはそう喜んだ。しかし、去年の9月が過ぎてみると、それも期限つきだったのだなと思わずにはいられない。条件ではない、期限だと法律家なら常識の範囲に属する。必ず来ることは条件ではない。期限なのだ。そして、そいつは必ずやって来る。
「死は、前よりしも来らず。かねて後に迫れり。」と吉田兼好も言っていた。
芥川龍之介は、『侏儒の言葉』のなかでこう言っている。
「もし游泳を学ばないものに泳げとめいずるものがあれば、何人も無理だと思うであろう。(中略)我我は母の胎内にいた時、人生に処する道を学んだであろうか?」
私の父はいつも言っていた。「年寄りの気持ちは年寄りにならないと分からない。」
未だ若かった私は聞き流していたと思う。なにそんなこと分かっているさ、というつもりだったのである。
人類発生いらい、何十億人の老人が嘆いてきた嘆きであろう。つまり、嘆いても伝わりはしないのだ。まだ生きていることを僥倖ととらえて、できることをするしかない。
最近、80歳を間近にした女性が「とにかく何とか80歳まで生きていたかったの。」
この記事に関連するニュース
-
「令和3年の年賀状」団塊の世代の物語(5)
Japan In-depth / 2024年6月12日 19時0分
-
「血が出てるんだぞ!」病院に徒歩で現れた“クレーマー老人”に振り回された若手医師の嘆き――仰天ニュース・困った高齢者トップ3
日刊SPA! / 2024年6月8日 8時45分
-
「完全に人間不信になりました」新入社員が居酒屋で耳にした“信じられない会話”の中身とは?
日刊SPA! / 2024年6月2日 15時53分
-
「いい伴侶ができてよかった」岡田美里、堺正章からも祝福された“人生のセカンドステージ”
週刊女性PRIME / 2024年6月1日 16時0分
-
【モラハラのターゲット】になる人の共通点とは? 気づかないうちに「洗脳までの3ステージ」をふまされてしまう!
OTONA SALONE / 2024年5月28日 21時0分
ランキング
-
1東京の高い生活費、晩婚化と育児の壁に…全国から若者流入しても衝撃の出生率「0・99」
読売新聞 / 2024年6月26日 5時0分
-
2【独自】『電動スーツケース』で歩道走行…中国籍の女性を書類送検 電動スーツケース摘発は全国初 保安基準を満たしておらず
MBSニュース / 2024年6月26日 12時10分
-
3ふるさと納税の「ポイント」禁止へ……ナゼ? 総務省「競争過熱が緩和すれば手数料が下がる」 仲介サイトや自治体の声は
日テレNEWS NNN / 2024年6月26日 10時8分
-
4【速報】富士山静岡県側火口付近で発見された登山客とみられる3人の死亡確認
Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2024年6月26日 17時34分
-
5東京地検特捜部が乗り出し…“超一流弁護士”34人から約8700万円を詐取した税理士は「有名作家の息子」だった
文春オンライン / 2024年6月26日 7時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)