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「令和2年の年賀状」団塊の世代の物語(4)

Japan In-depth / 2024年5月16日 21時0分

英子は大木が部屋にはいるなり席から立ち上がって、軽く頭を下げて挨拶してくれた。ここではドアを入るとすぐ右前に何客かのソファがあって、待ち合わせようの席になっているのだ。ウェイターの一人がまず客である大木ののために大木をドアの反対側の席に案内し、その間にもう一人のウェイターが英子をドア側の席に案内し椅子を引く。大木はこの部屋で初めてドアの反対側の席にすわると、つくづくと細長いテーブルを左はしから右はしまで眺めわたした。右がわにはガラスの置物がある。同じテーブルなのに見る位置が違うだけで別の部屋のようにみえる。





いつも大木がすわるドア側に英子がすわっていた。もういちど英子はテーブルに届くほど頭を下げて礼をくりかえした。





「いやあ、ここでこちらがわに座るの、僕、初めてだよ」





大木は、意識的にはなからくつろいだ声であいさつをかえした。





ウェイターは大木がアルコールを飲まないのを承知している。





「いつものビットブルガですね」





確認すると、英子は不思議そうな顔をした。





「もう飲まないんだ。この間もそうだったんだけど、気がつかなかったよね。」





「ううん、わかっていたわ。でも、今日はすこしお飲みになるのかなっておもって」





「どうぞ遠慮なく、なんでもご自分の好きなものをお飲みください。といっても、今日はあなたの奢りなんだけど」





「じゃ、私にはクリュグのグランキュヴェを少しだけ」





右後ろに控えているウェイターに英子が小声で話しかけた。





「クリュグ。なんとなくイメージだね。」





大木はビットブルガをあえてシャンパングラスに入れてもらって、英子と乾杯した。





トップ写真:イメージ ※本文とは関係ありません 出典:nature picture/GettyImages




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