「敵に手の内をさらさない」という防衛省、自衛隊の「敵」は国会と納税者か
Japan In-depth / 2024年6月9日 19時0分
民主国家では軍隊の装備調達が適切かどうか判断するための材料として当然のごとく公開している情報だ。それを「相手(敵)に手の内をさらさない」と隠している。諸外国からみれば乾いた笑いしかでてこないだろう。
防衛省や自衛隊の「相手」=敵というのは国会と納税者のことではないか。
これまで陸自の装甲車輌調達は概ね30年程度かかっていたが、それから比べるとAMVの調達は短くはなっているが20年は長過ぎる。概ね他国の2~3倍は長い。これでは調達途中で旧式化してしまうし、その間に戦力化すべき部隊が本来必要とされる部隊数が揃わない。更に少数生産で調達期間が延びればその分調達単価も上昇する。新旧に種類の装備が長年混在すれば教育や兵站も二系統必要であり、その分人員も多く必要だし、それぞれの消耗部品なども別々に調達するので維持コストが高くなる。実戦での戦力見積もりも複雑になる。
本来国会ではこのような調達期間と調達単価についての議論があって然るべきだが、そのような議論はほとんどされていない。更に申せばメーカーであるフィンランドのパトリア社が20年先も生産を続けているかもわからない。防衛装備庁がその確約を取ったわけでもない。あまりに杜撰だ。
陸自はカール・グスタフ無反動砲M3を輸入して使用しているが、調達を決定したのは後継のM4の生産が決まってからだ。わざわざ旧式化が決定してから調達を始めたのだ。すでに生産修了が見えている段階で採用を決定して、いつまでに調達を完了するかも決めていなかった。しかもあろうことか途中で5年間も調達を停止していた。
メーカーのサーブ社が、M3の生産をやめたがっているのに無理に頼んで生産してもらっていた。この先もサーブが付き合ってくれる保証はない。よしんば作ってもらえても、自衛隊のためだけにラインを維持するならば、極めてコストが高くなり値段も高騰する。
写真:カール・グスタフ無反動砲M3(提供:陸上自衛隊)
また将来部品などの供給が止まることも予想される。この件を筆者は記事にし、防衛省内局も危惧して本年度のM3の調達がM4に切り替えられた。このような変化も外部からに指摘がなければ行われなかった。情報公開が必要だという実例である。
さらに問題は「初度費」である。「初度費」は本来先述のように生産開始にかかる初期の費用を手当するものだ。だが防衛省では途中での改良や不良の手直しなどで10年でも20年でも「初度費」を支払い続けることができる。
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