「敵に手の内をさらさない」という防衛省、自衛隊の「敵」は国会と納税者か
Japan In-depth / 2024年6月9日 19時0分
海自のP-1哨戒機は現在でも稼働率が3割程度しかない。主たる原因はエンジンと光学電子センサーの信頼性の低さだが、その解消のために延々と「初度費」が支払われている可能性が高い。この「初度費」も調達の不明瞭化の原因になっている。それでも以前防衛省は財務省に指摘されて、主要装備の初度費は毎年公開していたが、現在ではそれもされなくなっており、より不透明となっている。
対して米国ではF-35戦闘機の稼働率やミッション達成率を公開し稼働率の低さをGAO(会計検査院)や、議会の調査局が具体的な数字を公開して、分析を披露している。現段階ではミッション達成率は55パーセントあり、これは適切な手段を用いればF-35BとCは65パーセントまで、F-35Aは75パーセントまで向上させることが可能であると述べている。(参照:米国会計検査院 議会報告 / https://www.gao.gov/assets/gao-23-105341.pdf )
このように会計検査院、議会、その背後の納税者に情報が明らかになるからこそ、軍も真摯に改善に努めるのである。
更に海幕はこの稼働率の低いP-1をベースに電子戦機を開発する予定だ。この電子戦機は4機ほど調達が見込まれており、他の機体も検討した上でP-1が最適だと判断したという。確かに哨戒機と同じ機体であれば、訓練や整備も共用化できる。だが、ご案内のように稼働率はわずかに3割なので、有事に一機も飛べない可能性がある。
しかも米海軍の哨戒機P-8は、ベストセラー旅客機である737をベースにしているのに対して、P-1は専用の機体とエンジンを採用しており、調達単価は民間機ベースの数倍、維持整備費用は一桁は高いだろう。この低稼働率と高コストを鑑みればP-1ベースに開発するメリットは低い。海幕が候補を検討したといってもはじめにPー1ありきで、やったフリでしかない。
同様に空自もC-2輸送機ベースに2種類の電子戦機を開発しているが、これまた機体調達コストは民間機ベースの数倍、維持整備費は7倍以上であろう。有事に飛べない機体を税金を使って開発し、諸外国の同様の機体の何倍もの維持費を税金で払うのだ。
写真:P-1哨戒機(海上自衛隊提供)
対して米空軍は電子戦機にベストセラービジネス機であるガルフストリームG550をベースに、EC-37Bを開発、採用している。例えば海空自で共通の民間機を選定して電子戦機を開発すれば調達および維持コストは劇的に下がったはずだ。還元すれば空海自の電子戦機は国産機体を使用することを目的に税金をドブに捨てているといってよい。
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