海自の艦艇は脆弱で戦争ができない
Japan In-depth / 2024年11月19日 16時10分
清谷信一(防衛ジャーナリスト)
【まとめ】
・11月10日、海上自衛隊掃海艇「うくしま」で火災。1名が未だ行方不明。
・艦艇勤務の深刻な「人手不足」が原因か。
・無人哨戒機の採用を推進し、クルー制を積極的に導入すべき。
11月10日、福岡県沖を航行中の海上自衛隊の掃海艇「うくしま」で火災が発生、機関員一名が未だに行方不明となっている。原因の特定は今後の調査が待たれるところだが、木造船とはいえ、あまりに火の回りが早すぎるし、まして沈没に至ったことに疑問を持つ海自OBもいる。火災事故が発生した原因、更に鎮火が遅れた原因は乗組員の充足率の低さも関係しているのではないか。「うくしま」の定員は45名に対して、朝日新聞の報道では実際の乗組員は38名だったと報じられている。
このため筆者は11月12日の防衛大臣会見で同艇の乗員数を質問したが、中谷大臣は「充足率につきましては、一般的に陸海空含めて90%程度と聞いております」と回答し、「うくしま」の乗員充足率について明言を避けた。その後事務方に問い合わせたが「手の内を晒さない」との解答だった。別にすべての艦艇の充足率を教えろといっているのではない。今回の事故の原因に関係するからこのフネに限定してなのだが、それでも明かさないという。
海自の艦艇の乗員の充足率は低い。最も重要とされている水上戦闘艦であるイージス艦ですら6割程度である。本来乗っているべき乗組員がいないので、乗員は複数の部署を掛け持ったり、長時間勤務を強いられている。それぞれの部署で目が行き届かなくなったり、疲労が蓄積してミスも起こりやすい。当然訓練も十分にできなくなって、練度の維持も難しくなる。この点からも事故が起きやすくなる。
平時の場合、通常水上艦では乗組員を3グループに分け、3時間ごとに当直を交代する「3直体制」を取っている。有事に際して戦闘準備態勢を強化する場合2直体制になり、戦闘時には1直体制となる。充足率が不足ではその体制を維持することは不可能だ。
平時の火災などの事故はもちろん、有事に攻撃された場合のダメージコントロールも「人手」が必要だ。火災の消火活動や浸水防止、負傷者の搬送や手当なども人手が必要だ。
人手がなければダメージを極小化することができずに、被害は拡大する。例えば他国の軍艦なら小破ですむところ、大破や沈没に繋がるだろう。無論人的な損害も大きくなる。沈没ともなれば巻き込まれて、本来助かる乗員も艦と運命をともにすることになりかねない。更に申せば海自の護衛艦や潜水艦は定員の中に医官が含まれているが、乗っていない。唯一の例外は海外任務だけだ。
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