トランプ新政権の日本への意味とは その2「不法移民」という用語の誤り
Japan In-depth / 2025年1月6日 11時0分
――確かに不法入国者による犯罪事件は日本の主要メディアでも、ほとんど報道されなかったですね。
古森 そうですね。この種の展開の背後にはアメリカの大都市の「聖域都市」(サンクチュアリー・シティー Sanctuary City)の存在が大きな役割を果たしていました。この制度は特定の地方自治体が域内で外国からの入国者に対する合法か非合法の滞在かというような調べをしないことを宣言するシステムです。外国人への寛容な政策であり、背後にはアメリカ合衆国は外国からの移民や難民によって築かれた国なのだ、という認識があります。民主党リベラル派が先頭に立って進めた施策です。オバマ政権時代にとくに全米各地に広がりました。ニューヨークやロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴなどがその代表格です。みな民主党が政治的に強い地域です。
――この聖域都市についても日本での報道は少ないですね。
古森 アメリカの大手メディアの報道が少ないという要因もあります。さてバイデン政権のこの重要課題への対応ですが、同政権は当初、不法入国者が正確に何人、入ってきたかを公表しませんでした。確実な人数はつかんでいるはずなのに、総数を公表しないのです。トランプ陣営から非難が高まり、一般国民の間でも苦情が高まって、バイデン政権がようやく発表した数は不法入国者総数1100万人でした。
しかしその後に大統領選挙でトランプが勝ち、不法入国者の本国への強制送還を公約として改めて強調するようになると、バイデン政権周辺からは不法入国者の総数は実は2000万人なのだ、という新統計が流されるようになりました。トランプ政権がその本国送還を実行することはもう困難だろうというメッセージをこめた「新統計」のようなのです。
バイデン政権ではこの国境警備、そして不法入国者への対処にはハリス副大統領に総責任者としての権限を与えました。しかしハリスは肝心のメキシコとの国境地帯に行こうともしない。民主党傾斜のメディアからもこの対応には批判があがりました。議会両院でも同様の声が出ました。
バイデン政権のこの対応に対して不法入国者が最大の人数、入ってきたテキサス州では共和党のグレッグ・アボット知事が不法入国者50人を選んで、バスに乗せて、ワシントンのハリス副大統領の公邸に陳情に送りこむという措置を取りました。テキサス州だけでは不法入国者の受け入れはまかないきれないから、連邦政府のより積極的な支援を求める、という訴えでした。
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